井川遥、『おちょやん』高城百合子がハマり役 スター性と人間味を両立するその魅力

 デビュー当時と変わらない気品を保ち続け、これまでのキャリアの中では、コミカルでトボけた役も演じてきた井川にとって、百合子はまさに適役だろう。ただこの役のポイントは、決してすでに成功を収めた大女優というわけではなく、今でも壁にぶつかっているということ。そもそも、最初の千代との出会いは、所属事務所に舞台から活動写真女優への転向を求められたことを不服に逃亡中だったときだ。そして千代が大部屋俳優となり撮影所で出会うときには、監督に「さようなら」のセリフを何度もダメ出しされ、「自分ではなくなる」と共演俳優と駆け落ちしてしまうなど、自分の意志を曲げるくらいなら逃亡する厄介な人でもある。

 百合子がスター女優まで登り詰めるには、撮影所システムや、女優という職業観もまだ千代の時代ほど整ってはいなかっただろう。そう考えると、百合子はある意味千代以上の苦労人とも言える。井川自身もキャンペーンガールから20年以上のキャリアを積んで、今こうして女優として活躍しているわけで、百合子役が自然と合うのも不思議ではない。

 1月22日放送の第35話では、千代に「何でも利用するのよ」と極意を伝授し、「私たちは自由なのよ」と大女優らしく立派にアドバイスする百合子。ただ千代に匿われた逃亡中に助言するというコミカルさが、彼女の人間味あふれる魅力につながっている。

 大スターと新人女優という関係は、朝ドラで例えると『あまちゃん』で薬師丸ひろ子が演じた鈴鹿ひろ美と、のんが演じた天野アキにも近いものがある。鈴鹿ひろ美は天然ボケのようで、全てが計算ずく。最後にビシッと決める大物女優ぶりを見せていたが、逃亡中の百合子は今後千代とどのように交わるのだろうか。女優の人生を描くドラマとして、千代と同じように百合子の物語としても実に興味深いドラマである。本作での百合子の大物女優ぶりで、改めて井川遥という女優の面白さと、貫禄ある演技が体感できる。井川は、現実でもスター女優の仲間入りを果たしそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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