細かい“厭描写”が光る “気軽に楽しめる映画”の需要を満たす『デンジャー・ゾーン』

 また、ミカエル監督の細かい厭描写も良い。サスペンス/ホラーが専門分野なので、アクションよりも厭なシーンでその手腕を発揮している。先にも書いたキャンディを食べながら空爆をするハープ、ガンプスを面白半分でイジメる人間たち、悪のテロリストが市民にリンチを受ける……等々、こうした人間の闇が垣間見える瞬間が妙に多い。アクション映画の爽快感には欠くが、戦争映画の厭な感じはしっかりある。ミカエル監督の味付けはバッチリだ。

 もちろん、こうしたそれぞれの要素がバッチリ噛み合っていれば、傑作待ったなしだったのだが……残念ながら、本作はチグハグな印象だ。しかし全体的には問題ありだが、個々のパーツは確かに輝いている。量産型戦闘ロボット、銃撃戦、戦場で露呈する人間の厭なところ……こうした場面を見るだけで脳が幸せな気持ちになる人間(私)にとって、本作は一見の価値があるだろう。いや、本当にこういう規模のアクション映画を量産してほしいんですよ。メカニックに全振りした『スペクトル』(2016年)、アクションにバチバチにこだわった『タイラー・レイク-命の奪還-』(2020年)、キャラの関係性に重きを置いた『オールド・ガード』(2020年)、こういう規模間での一転突破型アクション映画がたくさん観たいんです。僕は。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■配信情報
『デンジャー・ゾーン』
Netflixにて独占配信中

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