宮藤官九郎×磯山晶が語る、5年に渡る長瀬智也との『俺の家の話』の構想 「ようやく整った」

「“長瀬くんとだから、生まれた場面”しかない」

――役者としての長瀬さんの魅力は、どのようなところだと思われますか?

宮藤:「思い切りがいい」ところですね。自分で限界を決めずに思いっきりやってくれるのが気持ちいいです。笑わせるところで、小手先のテクニックでやろうとしないで力いっぱいやってくれる。最初に役に入る時は細かいことを気にするんですけど、後は細かい質問を一切しない。やりやすいです。

磯山:スケールが大きいところですね。繊細なところもありますが、画面で観る限りにおいては、ものすごくスケールが大きくて、細かいことを気にしているように見えないというか。もしも私が男だったらこういう人に生まれたい! という感じです。外見のカッコ良さはもちろんあるのですが、こういう人になりたいという姿を自然な形で演じられる人です。本当に「唯一無二の人」だと思いますね。

――長瀬さんとだから、生まれた場面はありますか?

磯山:「長瀬くんとだから、生まれた場面」しかないです。とにかく彼は今、プロレスとお能の両方を稽古しないといけなくて「俺はスーパーマンじゃないよ」と愚痴られるくらい負担をかけちゃているんですが、びっくりするくらいプロレスも能も習得が早いです。だから長瀬くんとドラマを作っていると楽しいんです。ふつうの人では絶対にできないことを成立させてくれるので。

宮藤:介護のシーンで、お父さんのことを支える場面や、お父さんに意地悪なことを言われた時のリアクションが見たかったんですよね。「なんで俺ばかりこんな目に遭うんだ」と感じている「長男の悲哀」というか。20年ぶりに家に帰ってきて自分が仕切らないといけないというストレスと、躍起になっている感じが「長瀬くんが演じると真に迫るんだろうな」と思いました。

磯山:プロレスラーという職業こそ現実離れしていますが、人間性という側面では、今まで演じていただいた役の中では一番、地に足がついていてリアリティがあると思います。想像の斜め上の人ではあるのですが、20代の時の長瀬くんと比べると、人生経験を積んで、良い意味で42歳の“おじさん”なので、ふつうの人が感情移入しやすい人になっているのではないかと。

宮藤:プロレスや能をやる人だからということもあって、今回はナレーションで心の声を書いているんですけど、今まで書いた役は「思っていることを全部言う人」だったんだと思いました(笑)。今回は思っていることを口に出せない役なので、ものすごく新鮮ですね。プロレスのシーンはテンション高いですが、基本的に家の中にいるので、感情をむき出しにできないだろうと思って、心の声を設定しました。狙い通りに行けば、今まで見たことのなかった長瀬くんになると思います。

――父親役は西田敏行さんですが、『タイガー&ドラゴン』と『うぬぼれ刑事』でも長瀬さんと共演されていましたね。

宮藤:西田さんと長瀬くんは相性がすごくいいので「介護する人、される人」という関係になった時に悲壮感がなく演じていただけると思いました。

磯山:セッション感が凄くて、台本の何倍も喋るアドリブが続く二人なので、明るい介護の話をやるなら二人しかいないと思いました。お互いに好き同士なので。他の方も、この人に出ていただかないと困るという人に集まっていただきました。

宮藤:江口のりこさんは今回が初めてですね。ああいうドライな空気感を持つ人もいてほしいと思いました。戸田恵梨香さんは久しぶりですね。介護ヘルパーだけど謎があり、実は財産目当てなんじゃないか? という難しい役です。

磯山:戸田さんには以前、『流星の絆』(TBS系)にご出演いただきました。桐谷健太さんを騙す詐欺師の役で看護師に変装したのですが、七变化した時の魔性感がすごかったので、お願いしました。この役は戸田さんに演じていただかないと成立しないと思っていたので、ご快諾いただいた時は嬉しかったですね。

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