『僕のヒーローアカデミア』劇場版が高評価な理由 第3作はどんな作品に?
人気漫画『僕のヒーローアカデミア』(以下『ヒロアカ』)の第3弾となる新作アニメ映画が2021年の夏に公開されると発表された。いまや『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)では『ONE PIECE』に次ぐ長期連載となり、ジャンプ漫画を支える屋台骨の1つとなっているほか、ヒーロー文化に親和性の高いアメリカでも大人気となっているタイトルだけに、その注目度は自ずと高いものになる。今回は過去2作を振り返りながら、新作映画がどのような作品になるのか、簡単に予想していきたい。
まずは1作目の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜』から振り返ろう。巨大人口移動都市であるI・アイランドに訪れた主人公のデクとオールマイト、そして雄英高校の生徒たちがテロリストが起こす事件に巻き込まれてしまう騒動を描いている。『ヒロアカ』らしい明るいコメディとボンズの迫力のあるアクション作画、そして「正義とは何か?」という問いについても考えさせられる作品だ。
特に注目したい点は2つある。まずはゲストヒロインのメリッサ・シールドだが、彼女はデクと同じように個性と呼ばれる特殊な能力を持たない人間だ。この世界では無個性の人の方が少なく、危険を伴うヒーロー活動はできないとされている。それでもヒーローを支える側になり、科学者の夢を追う姿が描かれているが、デクの初期の状況と重なり、原作1話を思い返して涙腺を刺激される人もいるだろう。メリッサは魅力的なキャラクターであり、映画のゲストキャラクターとしてのみならず、本編にも登場してほしいと熱望する存在だった。
そして最も注目を集めるのがオールマイトとデクの共闘だろう。原作漫画では様々な状況が重なってしまい、2人が共に戦うことはない。そのもしもの夢を叶えてくれる作品であり、映画というスピンオフ作品だけではもったいないとすら感じさせるエピソードでもある。だからこそお祭り感も大きくなったこともあり、ファンから高い評価を獲得した。
またどうしても『ヒロアカ』ではヒーロー側の描き方が多くなりがちなのだが、ヒーローを支える科学者のメリッサ親子に注目することにより、ヒーローを支える人たちの思いが描かれることにより、更なる世界観の底上げに繋がる。筆者は『ヒロアカ』をほとんど知らない状態で映画を鑑賞したが、とても気に入り原作を全巻集めるほど深くのめり込んだ。映画がキャラクターや物語の魅力をしっかりと抑えながらも、初見でも問題ないように作品の入り口となる、理想的な作り方をしていたからにほかならない。
2作目の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』に話を移そう。出久ら雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちが向かった那歩島を舞台に、ヴィランとの対決が描かれている。こちらでは当時のテレビアニメ版よりも少し先の出来事が描かれ、人気キャラクターのホークスが初登場しており、原作ファンも喜ばせた。
この作品で最も驚かされたのが、雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちが全員集合したことだ。1作目の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜』ではメリッサやオールマイトとの関係が主になるため、ほんの一部の生徒以外は島に来ていない、来ていてもあまり事件に絡むことがないキャラクターもいた。しかしこの作品ではクラスメイト20人を集結させて、それぞれに見せ場を与えている。その誰が欠けても作戦が成功しないと感じさせる作りとなっている。
そして原作者の堀越耕平が「原作の最終決戦に考えていたネタの1つ」と答えているラストの展開はまさに圧巻だ。「その手があったか!」と思わせるスーパーパワーの理由にも納得がいくとともに、この手が使えなくなった原作がどこに向かうのか、よりワクワクさせる出来となっている。