下ネタ満載のコメディからファミリー映画まで 俳優ウィル・フェレルの多才な魅力
『俺たちフィギュアスケーター』ヒットの影響もあり、やはりウィル・フェレルといえば下品なコメディのイメージが強い。日本ではやはり劇場未公開ながら、コメディファンには広く知られている『俺たちニュースキャスター』などをはじめとするスラップスティックコメディが、彼の主戦場なのだ。
それらの作品で、フェレルは常にテンションが高く意味不明で下品な行動をする人物を演じている。そんなパワフルで型破りなキャラクターを体現できるパフォーマーはそうはいないだろう。とんでもなくバカバカしい演技を全力でこなす彼のコメディアンとしての魅力は、その力強さと明るさだ。190センチを超える長身からくり出される驚くほど軽快な動きは、観客の目を釘付けにする。2005年のミュージカルコメディ『プロデューサーズ』では見事なダンスとともに歌声も披露し、ゴールデングローブ賞助演男優賞にもノミネートされた。同作で彼が演じたのはナチス大好きな脚本家という際どい設定のキャラクターだが、フェレルの手にかかると憎めない人物になってしまうから不思議だ。彼が演じる楽天的でおバカなキャラクターは、そのパワーで観客に笑いと元気を与えてくれる。
ウィル・フェレルは実は『エルフ』だけでなく、ほかにもファミリーで楽しめる作品に出演している。映画版『おさるのジョージ/Curious George』やドリームワークスの『メガマインド』、そして『レゴ(R)ムービー』などアニメーション映画への声の出演も多い。そのどれもが良作として知られているので、特に小さなお子さんのいる家庭では大人も一緒に楽しめること請け合いだ。また『パパVS新しいパパ』では、2人の子どもを持つ女性と結婚した継父を演じ、マーク・ウォールバーグ扮するワイルドな実の父ダスティと、子どもたちの支持を奪い合う。フェレル演じるブラッドは穏やかで真面目だが、子どもたちが喜ぶようなクールなことは何一つできない。この作品はフェレル得意のドタバタコメディではあるが、多少ファミリー向けにジョークがマイルドになっている。
一方で、彼はシリアスな演技もこなすことができる俳優だということも忘れてはいけない。2006年に公開された『主人公は僕だった』で、フェレルはある日突然謎の声が聞こえるようになったハロルド・クリックを演じている。その声によって自分の死を悟った彼は、決まりきった退屈な日常から少しずつ脱出していく。ハロルドは、それまでフェレルが演じてきた役柄とは正反対の、真面目で面白みのない男だ。しかし物語が進むにつれ、彼はテンションこそ低いが、まもなく訪れる死に怯えながらも悔いのない人生を送ろうと静かに奮闘する。繊細な演技が要求されるこの役で、彼はゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされた。
フェレルはコメディの才能だけではなく、俳優としてその演技力も評価されているのだ。コメディアンがシリアスな俳優として認められるまでに苦労する場合も多いことを考えると、フェレルがすでにそれを両立していることは、特筆すべきだろう。