シム・ウンギョンの“言葉”の威力が凄まじい 『新聞記者』に通じる『七人の秘書』での佇まい

 また、ラーメン店「萬」で秘書たちがどこからともなく集まり誰ともなく話し出す様子は、彼女が銀行員ソヨン役として出演した映画『架空OL日記』での社食や女子更衣室での仕事の合間の“隙間時間”、“オフモード”感を彷彿とさせる。

 本作後半、ラーメン店店主で秘書軍団の元締めの萬(江口洋介)に「サランは医者じゃなくても、人を救ってるぞ」と言われた後の彼女の表情、間合い、ラーメンを食べながらそれをごまかす一連の演技は本当に見事で胸に迫るものがあった。

 映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』では、主人公の“なりたかったもう一人の自分”という天真爛漫で自由奔放な幻影を演じたが、改めて彼女の放つ言葉の威力の凄まじさを思い知らされる。大声を張り上げたり、ハッキリと発音するわけでもないのにストレートにこちらの心に届くあの言葉の力は何なのだろう。おそらく母国語ではないからこそ、彼女が「言葉」の力を過信しすぎていないところに起因しているのではないかと思われる。「言葉」を大切にするのはもちろんのこと、そこに何より「伝えたい」と願う祈りのようなものが込められているような気がするのだ。そして、日本語の話し方や流暢度合いも演じる役や設定によって変えていることがよくわかる。

 ちなみに本作でのサランは、SEのエキスパートでハッカーの才能も持ち合わせているようだ。これからさらにその高度なハッキングスキルの見せ場が用意されているに違いないと思うとそれも楽しみだ。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『七人の秘書』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介
ゲスト:萬田久子、大和田伸也、木下ほうか、小林隆、杉田かおる、藤本隆宏、とよた真帆、橋爪功、マキタスポーツ、リリー・フランキー、松本若菜、永瀬莉子
脚本:中園ミホ、香坂隆史、林誠人
演出:田村直己(テレビ朝日)ほか
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、 浜田壮瑛(テレビ朝日)、大垣一穂(ザ・ワークス)、角田正子(ザ・ワークス)
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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