息子を失った女性が息子の面影を宿す少年に出会ったら? 『おもかげ』本編映像公開 

 現在公開中の映画『おもかげ』の本編映像が公開された。

 本作は、スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に製作した15分の短編映画『Madre』をオープニングシーンとして採用し、息子を失った主人公エレナの“その先”を描いていく物語。ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、主人公エレナを演じたマルタ・ニエトが女優賞を受賞したほか、スペインで4つの主演女優賞を獲得した。

『おもかげ』本編映像

 このたび公開された本編映像は、主人公エレナが、息子の面影を宿す少年ジャンと初めて言葉を交わす中で急速に距離が縮まる様子を捉えたシーン。エレナの幼い息子が旅先のフランスの海辺で失踪してから10年。彼女は地元のスペインを離れてフランスへと移り、その海辺の町ヴュー=ブコー=レ=バンにあるレストランで雇われ店長として働いていた。そんな夏のある日、エレナはその海辺で息子の面影を宿す少年ジャンと運命的に出会う。この場面は、後日、エレナの仕事中にジャンが突然レストランに現れ、エレナに話しかけるシーンだ。ふたりが言葉を交わすのがこの日が初めてだが、どこかあけすけにエレナにしきりに話しかけるジャン。エレナは柔らかな表情でその話を聞き続けていたが、ジャンの「携帯番号を教えて」という言葉をきっかけに展開は一変する。

 このシーンでジャンから思わぬ指摘をされ動揺を隠せないエレナだが、演じるニエトは脚本を読んだ時の感想として「エレナが感じる一つ一つの動機と、それぞれの感情を理解できた自分がいたのを今でもはっきりと覚えています。脚本を読んで、感動のあまり泣きました。こんなにも強くて、同時にとても繊細で壊れやすいこのような役柄を演じることができて、本当に嬉しかったのです」と振り返る。

 映画の中では描かれない息子の失踪後の10年について、ニエトは「失踪の先には、想像を絶する濃い闇があるんだと思います。死の場合とは違い、なかなかそれを乗り越えられず、どうしても喪に服すことができないというか、人生の次のページをめくることができないのです。不確実さが残るがゆえに、決して休まることがない。本当に拷問のような人生です。短編(本作オープニングシーン)でのエレナは生き生きとしていて決断力があり素直ですが、その後のエレナはボロボロになっていて、何とか生き延びるような生き方しかできなかったのです……ジャンと出会うまでは」とその心情を語り、ジャンとの出会いがエレナに変化をもたらすことを示唆する。

 また、ソロゴイェン監督はエレナについて「息子を失ったエレナが、今になってその面影を鮮明に蘇らせるような少年と出会ったらどうなるでしょう。それが自分の息子ではないことを彼女は分かっています。実際、その少年はフランス人で、彼女の息子であるはずがないのです。それでも彼女は一緒にいたい。彼を知るために」と語った。

■公開情報
『おもかげ』
シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開中
監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン
共同脚本:イサベル・ペーニャ
撮影:アレックス・デ・パブロ
製作:マリア・デル・プイ・アルバラド
出演:マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール、アンヌ・コンシニ、フレデリック・ピエロ
配給:ハピネット
協賛:スペイン大使館
後援:インスティトゥト・セルバンテス東京
原題:Madre/2019年/スペイン、フランス/カラー/シネマスコープ/129分/5.1ch/スペイン語、フランス語/字幕翻訳:柏野文映、手塚雅美
(c)Manolo Pavón
公式サイト:omokage-movie.jp
公式Twitter:@omokage_movie

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