主人公エレナの心情と空や海の色がリンク 『おもかげ』“視線を交わす”本編映像公開

 10月23日に公開される映画『おもかげ』の本編映像が公開された。

 本作は、スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に製作した15分の短編映画『Madre』をオープニングシーンとして採用し、息子を失った主人公エレナの“その先”を描いていく物語。ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、主人公エレナを演じたマルタ・ニエトが女優賞を受賞したほか、スペインで4つの主演女優賞を獲得した。

 このたび公開された本編映像は、主人公エレナが息子の面影を宿す少年と初めて視線を交わす瞬間を捉えたシーン。エレナの幼い息子が旅先のフランスの海辺で失踪してから10年。彼女は地元のスペインを離れてフランスへと移り、その海辺の町ヴュー=ブコー=レ=バンにあるレストランで雇われ店長として働いていた。エレナはその海辺で息子の面影を宿す少年ジャン(ジュール・ポリエ)と出会う。それから数日後、2人は初めて視線を交わす。ジャンに見つめられたエレナは思いつめたような表情をし、思わぬ行動に出てしまう。

主人公エレナが息子の面影を宿す少年と初めて視線を交わす 『おもかげ』本編映像

 この場面で、厚い雲の中から光が差しこむ明るい空が強い印象を与えるが、このシーンだけでなく、エレナの心情と空や海の色がシンクロしているかのような場面が度々登場する。これについてソロゴイェン監督は「この映画を通じて、長い暗闇の中にあったエレナが再び生きるようになるまでの姿を見せたいと思いました。そのために、それを目に見えるありとあらゆるものを使って表現したかったので、時には雨が降るのを待ちながら、天気がいい時を待ちながら撮影を進めていきました」と狙いを語っている。

 演じるニエトは、脚本を読んだ時の感想として「エレナが感じる一つ一つの動機と、それぞれの感情を理解できた自分がいたのを今でもはっきりと覚えています。脚本を読んで、感動のあまり泣きました。こんなにも強くて、同時にとても繊細で壊れやすいこのような役柄を演じることができて、本当に嬉しかったのです」と振り返る。

 映画の中では描かれない息子の失踪後の10年について、ニエトは「失踪の先には、想像を絶する濃い闇があるんだと思います。死の場合とは違い、なかなかそれを乗り越えられず、どうしても喪に服すことができないというか、人生の次のページをめくることができないのです。不確実さが残るがゆえに、決して休まることがない。本当に拷問のような人生です。短編(本作オープニングシーン)でのエレナは生き生きとしていて決断力があり素直ですが、その後のエレナはボロボロになっていて、何とか生き延びるような生き方しかできなかったのです……ジャンと出会うまでは」とその心情を語っている。

■公開情報
『おもかげ』
10月23日(金)、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン
共同脚本:イサベル・ペーニャ
撮影:アレックス・デ・パブロ
製作:マリア・デル・プイ・アルバラド
出演:マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール、アンヌ・コンシニ、フレデリック・ピエロ
配給:ハピネット
協賛:スペイン大使館
後援:インスティトゥト・セルバンテス東京
原題:Madre/2019年/スペイン、フランス/カラー/シネマスコープ/129分/5.1ch/スペイン語、フランス語/字幕翻訳:柏野文映、手塚雅美
(c)Manolo Pavón
公式サイト:omokage-movie.jp
公式Twitter:@omokage_movie

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