森崎ウィンの笑顔と優しさが土曜日の癒やしに 『彼女が成仏できない理由』愛おしい登場人物たち

 “事故物件住みます芸人”の松原タケシによるノンフィクションを基にした、亀梨和也主演の映画『事故物件 恐い間取り』が世間を賑わしている中、NHKのドラマで事故物件に住む外国人留学生と、部屋に住み着いた幽霊のラブコメディがスタートした。森崎ウィンとアイドルグループ、ももいろクローバーZの高城れにがW主演を務めるドラマ『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)だ。

 『いいね!光源氏くん』において、現代にタイムスリップしてきた光源氏とOLのラブストーリーを愛嬌たっぷりに描いた“よるドラ”枠の新作。今回は、昨年放送された『トクサツガガガ』を手がけた名古屋放送局が制作を担当した。物語は、森崎演じる漫画家志望のミャンマー人・エーミンが漫画オーディションにて奨励賞を受賞し、名古屋にあるアート専門学校の特待生に選ばれるところから始まる。本作はエーミンが憧れる小鳥遊玲による漫画『氷の武将』をアニメ化した映像が用いられ、ファンタジー要素満載。一方で、『いいね!光源氏くん』で平安時代の光源氏から見た現代の姿が映し出されたように、外国人留学生が抱くリアルな心情も描かれる。

 不動産屋から知らず知らずのうちに事故物件を案内され、大事にしていた奨励賞の賞金も引ったくり遭い、失ってしまう……。日本人はみんな親切、そう信じていたエーミンが現実とのギャップに悩みながらも、夢を追いかける姿に思わず「頑張って」とテレビに向かって語りかけてしまうのだ。それも森崎の好青年ぶりが演技に活かされているからだろう。森崎は自身もミャンマー人の両親の元に生まれ、10歳までミャンマーの旧首都・ヤンゴンで暮らしていた。

 渡米後はスターダストプロモーション発のユニット・PRIZMAX(現在は解散)に所属し、音楽活動を続ける傍ら、俳優活動にも足を踏み入れた森崎。尾崎豊20回目の命日に完成した追悼映画『シェリー』で主演を務め、スティーヴン・スピルバーク監督の『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューを果たすなど、華やかな芸能生活を送っている彼だが、日本に来たばかりの頃は言葉や環境の違いで苦労したという(参照:トリリンガル俳優・森崎ウィン「英語・ミャンマー語ともにまだまだ勉強中」|芸能|婦人公論.jp)。自分が経験したことを追体験する今回の役柄で、森崎は豊かな表情を見せる。特に大好きな漫画と向き合っている時の子供のような笑顔が、週末の夜をゆっくりと過ごしている人の心を癒しているはずだ。日本のあれこれに驚き、純粋な反応を示す純粋なエーミンの存在が、本作を心温まるドラマに仕上げている。

 そんな彼が住む家賃1万円の部屋には、高城扮する幽霊の玲が住み着いていた。高城は今回がNHKドラマ初出演にして、初主演。普段は芸能界にもファンが多い“ももクロ”のメンバーとして、数十万人を動員する会場で激しいパフォーマンスを披露している。以前から幽体離脱の経験を語るなど、不思議な一面も魅力的な彼女はもともと感受性が豊かなこともあり、巧みな表現力で謎めいた幽霊を体現。エーミンと過ごす無邪気な姿、打って変わって一人の時に見せる憂いを帯びた表情、生前の想い人に恋する乙女な一面を見せ、印象がコロコロと変化する。

 あまりにも可愛すぎてちっとも怖くないが、高城の透明感が生み出す儚さが幽霊っぽく見える瞬間も。第2話では玲の正体が小鳥遊玲であることが明らかとなり、同時に彼女に憧れるエーミンとの関係が進展していく。まだまだ2人の恋の行方は想像し難いが、外国人留学生×幽霊というかつてない組み合わせと、フレッシュな主演ふたりの相乗効果がもたらす物語のラストが今から気になって仕方がない。

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