『アダムス・ファミリー』で味わう最高に“不幸せな”気分 杏、二階堂ふみらによる吹替版も必見!

 そして、キャラに命を吹き込むボイスキャストが超豪華も本作の魅力だ。ゴメズ=オスカー・アイザック、モーティシア=シャーリーズ・セロン、ウェンズデー=クロエ・グレース・モレッツ、パグズリー=フィン・ヴォルフハルトという、このメンツで実写化してほしい見事なキャスティングだが、日本語吹替版も負けていない。モーティシアを担当したのは杏で、普段のイメージとは違ったセクシーなクールビューティーぶりを発揮している。ゴメズは生瀬勝久で、ゴメズが生瀬に思えるほどイメージはピッタリ。そして、ウェンズデーを演じた二階堂ふみは『アダムス・ファミリー』の大ファンで今回のオファーを快諾。無表情な語り口のなかにツンデレな可愛さを滲ませて、ウェンズデーの新たな魅力を引き出した。そのほか、ゴメズの兄のフェスターおじさんに秋山竜次(ロバート)、マーゴにLiLiCoとバラエティ豊かなキャスティングだ。

(左上から時計回りに)杏、生瀬勝久、二階堂ふみ、秋山竜次(ロバート)

 原作の持つブラックな笑いに加えて、パグズリーがロケットに乗って飛び回ったり、ウェンズデーが家族を守るために立ち上がったりと、エンターテインメントの要素も導入。キャラクターを現代的にアレンジしながらも、彼らが本来持っている魅力を決して損なわない。そんなバランスの良さは、監督の二人が原作を心から愛しているからこそだろう。そして、ゴメズとモーティシアの結婚式や、彼らの忠実な執事、ラーチとの出会いなど原作にはないエピソードは原作のファンには嬉しいサプライズだ。ちなみにアダムス・ファミリーは連載当初、家族という設定ではなく、テレビシリーズ化された時に家族ということになったが、この映画で初めて彼らの歴史が描かれたことで、家族としての絆がさらに深まったと言えるかもしれない。ともあれ、映画を観終わった後、世の中には人の数だけフツーがあること、そして、それを認め合うことの大切さを教えてくれる本作は、最高に「不幸せな」気分を味あわせてくれるはずだ。

■村尾泰郎
音楽と映画に関する文筆家。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などの雑誌や、映画のパンフレットなどで幅広く執筆中。

■公開情報
『アダムス・ファミリー』
9月25日(金)TOHOシネマズ、イオンシネマにて全国ロードショー
声の出演:オスカー・アイザック、シャーリーズ・セロン、クロエ・グレース・モレッツ、フィン・ヴォルフハルト、ベット・ミドラー、ニック・クロール
日本語吹き替え版声優:杏、生瀬勝久、二階堂ふみ、秋山竜次(ロバート)、LiLiCo、井上翔太
監督:コンラッド・ヴァーノン、グレッグ・ティアナン
脚本:マット・リーバーマン
配給:パルコ ユニバーサル映画
上映時間:87分
(c)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. The Addams Family (TM) Tee and Charles Addams Foundation. All Rights Reserved.
公式サイト:addams-movie.com

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