山本千尋、香取慎吾×佐藤二朗との共演で学んだ三谷幸喜の“間” 「本当に勉強になりました」

 Amazon Originalドラマシリーズ『誰かが、見ている』が9月18日より配信中だ。タッグを組んだのは“ゴールデンコンビ”と評される、三谷幸喜と香取慎吾。今回、2人が挑んだのはシチュエーションコメディの略となる“シットコム”。香取と三谷がシットコムに挑むのは、2002年から2003年にかけて放送された『HR』(フジテレビ系)以来で、香取は失敗ばかりなのになぜか憎めない主人公・舎人真一を演じる。脚本・演出・監督を務めた三谷は、新たなエンターテインメントに挑むべく、セットの前に客席を用意し、客入れをした状態で撮影する方法を実施した。

 そんなこれまでにない作品にキャストとして参加したのが山本千尋だ。真一を書斎の壁に偶然発見した“穴”から覗き見る隣人・粕谷次郎(佐藤二朗)の娘・あかねを演じている。『ウルトラマンジード』(テレビ東京系)をはじめ、“アクション女優”として圧倒的存在感を放ってきた山本は、初となるコメディにどう挑んだのか。

思ってもいなかったコメディ作のオファー


ーー今回の“シットコム”は、映画ともドラマとも演劇とも違う初めての経験だったかと思います。

山本千尋(以下、山本):目の前にお客様たちがいるので舞台のようではあるのですが、客席と舞台の間には何台もカメラがあるんです。カメラとお客様様の両方を意識しながらお芝居をするのは初めての経験だったので、とても新鮮で面白かったです。

ーーやはり観客の存在は大きかったですか?

山本:本当に大きかったです! 皆さんの笑い声があると演じる私たちもすごくパワーをもらえてアドレナリンも出て、リハーサルではできなかったようなお芝居ができました。そのときそのときしか味わえない特別なものがありました。また、回数を重ねていくごとにお客様との連携のようなものが生まれていくのも楽しかったです。初回は私たちも初めての挑戦で、お客様たちにも緊張感が伝わってしまっていたんです。でも、お客様たちからの笑い声や存在のおかげでリラックスができて。本当に皆さんと一緒に作り上げた作品になったと思います。

ーー山本さんといえば“アクション”のイメージがあったので、キャスティングが発表されたときは驚きがありました。山本さんご自身はオファーを受けた際は?

山本:自分でもびっくりしました! コメディをしたことがない自分が選んでいただけるなんて思ってもいなかったので。もちろん、アクションをする作品は大好きですし、これからもどんどん挑戦したいと思っています。ただ、女優として成長するためには、アクション以外のお芝居の力をもっともっとレベルアップしないといけないと思っていたんです。そんな矢先に今回のオファーをいただいて。三谷さんの作品は、お芝居で観る方を幸せにする作品ばかりです。そんな作品の一員になれること、新たな挑戦ができること、本当にうれしかったです。

ーー体全身を使って表現するという点では、アクションとコメディの共通点も?

山本:あります! まさに体全体を使っていました。むしろ、アクションをするよりも今回の現場の方が何倍も疲れました(笑)。笑えないぐらい顔が引きつっちゃったり、心も身体も全力投球過ぎて、1話撮り終えるごとに疲労困憊だったんです。今まで経験したことのない疲労感でした(笑)。

ーー随所に山本さんならではのキレのいいアクションもありましたね。

山本:最初に三谷監督から「アクションのスキルをまったく活かせない役でごめんね」と冗談で言われたんです(笑)。でも、台本にはなかったんですが、「普通の人にはできない“蹴り”がここであったら面白いね」と現場でちょっとしたアクションを入れてくださって。私の見せ場を作ってくだって、本当に感謝しかないです。

ーー本作で初めて山本さんを知る人は突然のアクション力にびっくりすると思います(笑)。

山本:それも三谷さんが狙ってくださったんだと思います(笑)。緊張がほぐれる瞬間は身体を動かすときだったので、三谷さんもそれを理解してくださっていたのかなと後々感じました。撮影と撮影の合間にはお客様の前で「剣舞」も披露させていただいたんです。冗談を言うふりをして、裏側でいろいろと気を遣っていただきました。三谷さんの作品は心が暖かくなりますが、一緒にお仕事をさせていただいて三谷さんご自身が本当に暖かい方なんだと。そんな三谷さんに惹かれて、多くの役者さんやスタッフさんが集まってくる。本当にいいチームなんだなと現場で実感しました。

ーー三谷作品の特徴のひとつとして、独特の“間”の作り方があると思います。演じる側として難しさはありましたか?

山本:香取慎吾さん、佐藤二朗さんは、まさに“間”の作り方が本当に素晴らしいんです。お客様の反応を見て、役者たちの反応を見て、その場で常に最善の形に対応できる。間近でそれを見ることができたのは本当に勉強になりました。私は習得できたか分からないですが……(笑)。

ーー初挑戦とは思えない溶け込み具合だったと思います(笑)。

山本:うれしいです(笑)。撮影中もこれだけすごい方たちと一緒に演じられることがどれだけありがたいことかずっと実感していたんです。だから撮影中はみなさんに負けないように食らいつくのに必死でした。

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