『太陽の子』は未来を思い描くきっかけに 柳楽優弥を奮い立たせた有村架純と三浦春馬さんの存在
終戦記念日である8月15日、国際共同制作 特集ドラマ『太陽の子』(NHK)が放送される。75年前、日本に原子爆弾が落とされた。その事実を伝えるドラマは、これまでにもたくさん作られてきたが、その表面下で日本でも原子爆弾の開発実験が行われていたことを描いた作品は多くない。
太平洋戦争末期、京都大学の物理学研究室に、海軍から密命がくだされる。それは、新型爆弾「Atomic Bomb」の開発だった。成功すれば何十万という人の命を奪う悪魔の兵器になる。だが、失敗すれば敵国が完成させてしまう。作れても地獄、作れなくても地獄……そんな苦しい状況に立たされた科学者たちの苦悩を綴る。
『太陽の子』が生まれた始まりは「1冊の古い日記だった」と、作・演出を手がけた黒崎博は語る(引用:「太陽の子」BS8K先行放送のお知らせ | お知らせ | NHKドラマ)。科学に情熱を傾ける青春の日々。原子物理学という新たな学問への憧れ。それが軍事用兵器の開発に転用される疑問。「その姿は知らない誰かではなく、私たちと同じように生き方を探し続ける等身大の若者として迫り、僕は心を揺さぶられました」と。だからこそ、本作はいわゆる「戦争ドラマ」と呼ばれるものより、ずっと生々しく感じる。
京都帝国大学で原子の核分裂研究に没頭する若者・石村修を演じるのは柳楽優弥。「とても重大な事実をベースにしたストーリーということで、撮影が始まる前は正直とても怖かったです」と、この作品への責任感に震えていた。彼を奮い立たせたのは、何度も共演した実績のある有村架純、三浦春馬の存在だった。それぞれ有村は修の幼なじみ・朝倉世津を、三浦は修の弟・裕之役を演じている。
柳楽演じる修は、純粋に知的好奇心の強い青年だった。原子が破壊されたときに青緑色の光がキレイなのだと、ほころばせながら語る姿は、現代の若者が好きなコンテンツについて語るのと何も変わらない。先輩たち科学者も、この研究が、いつかエネルギーを奪い合わない未来へと繋がるはずだと信じて突き進んでいた。
だが、そんなピュアな知的好奇心までも根こそぎ戦争へと向かってしまう、時代の大きな流れの恐ろしさを改めてこのドラマで知ることができる。電力も満足に供給されない中で、ウランを手に入れるのも命がけ。この研究の先に何があるのかと、修の疑問は膨れ上がっていく。戦争とは何なのか。うまく言葉にできない鬱屈とした気持ちと、科学者としての情熱の間で、正義感がぐちゃぐちゃになっていく様子を柳楽が熱演する。