『MIU404』のキーマンの1人、成川岳から目が離せない “天才を演じる”鈴鹿央士のポテンシャル

 そんな鈴鹿だが、恐らく今作で彼のことを認知した方も多いはず。しかし新人とはいえ、すでに知る人ぞ知る存在でもあった。彼は2018年に『MEN'S NON-NO』(集英社)のオーディションでグランプリを獲得し、専属モデルデビュー。それ以前に、広瀬すず主演作『先生!、、、好きになってもいいですか?』(2017年)のロケ撮影の際、広瀬が自身のマネージャーに、その場に居合わせた鈴鹿をスカウトするように進言したというのは有名な話である。それに、現在の彼をこの道に誘うこととなった先輩・広瀬が主演した『なつぞら』(2019/NHK)では、テレビドラマ初出演にして朝ドラ出演。その役どころもまた、“新人”というものであった。

 そして何より、『なつぞら』放送終了直後に公開され、松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィンらに並んで大役を全うした映画『蜜蜂と遠雷』(2019年)での姿が鮮烈であった。同作は国際ピアノコンクールを舞台に、若き4人のピアニストが、それぞれの才能やその限界に苦悩する姿を描いたもの。鈴鹿は本作で俳優デビューを果たしたのだ。それも、4人のなかでももっとも若く、音楽の道を歩む環境には恵まれなかったものの、才能には恵まれた少年役。そしてやはり才能に恵まれれば、それを見出す者は必ずや現れるものだ。

『蜜蜂と遠雷』(c)2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

 この、“天才かつシンデレラボーイ”といった役どころは、これまた鈴鹿に相応しいものであった。とはいえ、いくら彼自身と重なるところのある役と言えど、“天才を演じる”というのは難しいはずである。デビュー作での大舞台には、それ相応のプレッシャーがあったに違いない。しかし、劇中で彼が見せた奔放さや柔軟さは、それを受け止める他の三者の存在があってこそのものだとも思うが、やはり彼自身の持つポテンシャルの高さからくるものが大きかったのではないだろうか。それは彼に贈られた数々の「俳優賞」が証明しているし、その後に『決算!忠臣蔵』(2019年)があり、今回の『MIU404』があるというわけだ。

 さて、鈴鹿央士が俳優として今後どうなっていくのか気になるが、まずは『MIU404』である。“走り”に自信を持っていた成川は、その機会を伊吹たちに奪われた。だが、彼らの決着はまだついていない。伊吹もまた足の速さに自信のある男とあって、再び“走り”で勝負する瞬間が訪れるのではないだろうかと、その日を心待ちにしている。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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