ロバート・ゼメキス製作総指揮ドラマ『マニフェスト 828便の謎』インタビュー

大根仁が語る、『マニフェスト 828便の謎』とロバート・ゼメキス 「人間ドラマがベースにある人」

「すげえ、面白そう! ゼメキスっぽい!!」

――今、挙げられた一連の映画もそうですけど、ジャンルのバラエティが、とにかくすごいという。

大根:そうなんですよね。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで名前を売って、『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー賞を獲りながらも、同じような作品は絶対作らない人なんです。00年代は、CGアニメ方面に行って、10年代になってから『フライト』で再び実写に戻ってきて……その『フライト』がまた、それまでのゼメキス作品とは、まったく違うものになっていて、すごく驚いたんですよね。『フライト』は、それこそ劇場に4、5回観に行った記憶があるし、本当によくできている映画で、一見なんてことないシーンでも役者への細かい演出や、小道具の使い方とかがめちゃめちゃ上手いんですよ。それ以降の『ザ・ウォーク』(2015年)は、ゼメキスらしい3D映像の使い方が良かったし、『マリアンヌ』(2016年)も好きでしたね。『マーウェン』(2018年)もすごく面白かったし、毎回撮るたびにジャンルが違う。常に変化し続けている人だから巨匠感も薄いし、監督としての“上がり”みたいなものが、いまだに見えないんですよね。

――だいぶキャリアは長い監督ですけど、次にどんな映画を撮るのか、今もまったく
わからないところがありますよね。

大根:そうなんですよね。スピルバーグとかって、ずっと“上がり”っぱなしの人っていうか、もう何が出てきても、そんなに驚かないじゃないですか。だけど、ゼメキスの場合は、いまだにちょっとワクワクするところがあるんです。どんな映画になっているのか、実際観るまでわからない(笑)。そこが稀有なところだし、いまひとつ評価が定まらない理由なのかもしれないですね。もちろん、すごい巨匠監督であることは、みんな認識はしているけど、どんな監督かって言われると、ひと言では説明できない(笑)。

――そんなふうにして、いまだに進化し続けているゼメキスが製作総指揮を務めるドラマ『マニフェスト 828便の謎』が、このたび日本でも観られるようになりました。大根監督は、今回のドラマシリーズの話を聞いたとき、まずどんなことを感じましたか?

大根:最近はデヴィッド・フィンチャーをはじめ、映画監督が制作総指揮としてドラマシリーズを手がける流れがあるじゃないですか。ついにゼメキスもそっちに行ったのかと。最初はちょっと「どうなのかな?」とは思いましたが、物語の設定を聞いて単純に、「すげえ、面白そう! ゼメキスっぽい!!」って思いました(笑)。

――そう、「乱気流に飲まれながらも事なきを得た旅客機が、その後、飛行場に降り立ったら、そこは5年半後の世界だった……」というあらすじを見て、「ああ、これは確かにゼメキスが好きそうな話だな」って思いました(笑)。

大根:そうですよね(笑)。タイムスリップという意味では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的なところがあるし、その背後には『コンタクト』のような超常現象的な要素があるみたいだし、飛行機繋がりという意味では、『フライト』っぽくもあるという。ただ、実際ドラマを観てみたら、やっぱり人間ドラマがベースにある人なんだというのを改めて思いましたよね。

――最初に大根監督が言っていたような?

大根:そう。このドラマも、何か見えざる力によって、糸口がほつれてしまった家族や人間関係を再生させるような物語じゃないですか。ゼメキスの作品全部がそうではないですけど、キモとなる作品では、必ず「家族」というテーマが描かれているように思うんです。しかも今回は、ひとつの家族の話ではなく、いろんな家族の話じゃないですか。そうなると描く人間の数が多い分、基本となる設定が広い。それはやっぱり、2時間の映画で描ききるのは難しいんですよね。いわゆる“群像劇”を描くのは、映画よりも長い時間をかけられるドラマシリーズのほうが複数の登場人物たちを描きやすいし、向いている。

――そのあたりは、ドラマシリーズならではの醍醐味ですよね。ちなみに、タイムスリップ要素に関しては、いかがでしたか? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は30年前にタイムスリップする話ですが、『マニフェスト』の場合は5年半先の未来という、結構微妙な時間軸の話になっていて……そのアイデアは、なかなか面白いですよね。

大根:そうですね。ありそうでなかった設定ですよね。まあ、5年半だったら、住んでいた世界がほとんど変わっていないとか、特殊メイクとかもほとんど必要ないとか、予算や撮影条件の事情があるのかもしれないけど(笑)。でも、5年半とはいえ、大人と違って子どもの場合は「こんなに変わるんだ」と、大人の時間と子どもの時間の流れ方の違いを感じたりと、その設定は結構新鮮でしたね。

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