『鍵のかかった部屋』玉木宏の強烈な存在感 クライマックスで大野智とどう絡む?

 残すところ2回の放送となった『鍵のかかった部屋 特別編』(フジテレビ系)。6月22日に放送されたのは、連ドラ放送時に2週にわたって放送された最終章「硝子のハンマー」の前編(通常枠での放送だった第10話と30分拡大枠の放送だった最終話を通常枠2回分で放送するため、第10話部分がかなり簡潔に編集されており、最終話の序盤部分まで突入していた)。冒頭に流れた大野智のコメントで一気にハードルは上がるが、それに値するだけの見応えあるエピソードと断言できよう。

 芹沢が顧問弁護士を務める介護サービス会社「ベイリーフ」の社長室が空気中で狙撃される事件が起き、セキュリティの強化を依頼された榎本(大野智)。しかし数日後、榎本が工事を取り行おうとする直前に社長の頴原(佐々木勝彦)が社長室で死んでいるのが発見される。死因は頭頂部を打撲したことによる脳出血。密室の社長室に唯一入ることができた専務の久永(中丸新将)が逮捕されるが、彼は犯行を否認。そんななか、垂れ込み電話によって榎本と穎原に面識があり、過去に穎原の自宅のセキュリティシステムをめぐる因縁があったことが明らかになった榎本は、事件への関与を疑われ警察に連行されてしまう。

 先日再放送されたSP版の「鏡の国の殺人」では、前半と後半で2つの異なる事件が展開していたわけだが、このエピソードではひとつの極めて難解な密室トリックをめぐる事件がじっくりと描写されていく。それだけに、この前半はあくまでも導入部分に過ぎず、何ひとつ解決の糸口が見えないというのがなんとも歯痒いところだ(その興味深い密室トリックについては、次週の放送後に言及したい)。とはいえ、冒頭の狙撃事件が社長による自作自演であったことと、それが社長室のセキュリティシステムを強化する目的であり、社長室には組織的な横領によって得られた貴金属が隠匿されているというところまでが明らかにされる。

 もっぱら伏線を張り巡らせることに徹したエピソードであっても、随所にミステリアスな面白味が散りばめられているのはさすがである。社長室に置かれた無機質な介護ロボットの異質さ、社長室と副社長室・専務室が廊下を通らずに繋がっているという、あたかも密室を破れそうなミスリード(これはなんだか『金田一少年の事件簿』の「タロット山荘殺人事件」を想起させられてしまう)。そして、青砥(戸田恵梨香)と芹沢(佐藤浩市)が、榎本の素性について全然知らないのだと改めて気付かされるくだり。極め付けは物語のカギを握るビル清掃員・佐藤学(玉木宏)の強烈な存在感と、彼が榎本に語りかける「あなたもこっち側の人間ですよね」という言葉だ。これらがどのように最終回に紐づいていくかは見ものだ。

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