TVアニメ『LISTENERS』は音楽ファン必見! 現実のロック史を巡るような“仕掛け”を読み解く

 クイーンのフレディ・マーキュリーの半生を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)、エルトン・ジョンの伝記的な作品『ロケットマン』(2019年)、ビートルズの楽曲が物語の軸となる『イエスタデイ』(2019年)など、近年の映画界ではロックスターと彼らの音楽を題材にした作品が次々と成功を収め、ある種のトレンドとなっている。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、ロック史に名を残すミュージシャンたちとその楽曲にまつわる逸話には、実に運命的かつドラマティックなものが多く、それらが映像作品において、物語を面白く彩る恰好の素材として機能するからこそ、音楽ファンを中心に幅広い人々の心を惹きつけているのだろう。

 そんななか、日本のアニメにも、海外のロックミュージックへのオマージュをたっぷりと盛り込んだ作品が登場して、にわかに注目を集めている。それが、この4月より放送中のTVアニメ『LISTENERS リスナーズ』。楽曲・小説・アニメなどを通して展開されたコンテンツ『カゲロウプロジェクト』で若者を中心に絶大な支持を得ているマルチクリエイター・じんと、TVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』(2005年)などで知られる脚本家の佐藤大が中心となり、異世界を舞台にしたロボットものというスタイルを取りながらも、洋楽好きであればニヤリとしてしまうネタをあちこちに忍ばせることで、音楽とアニメーションの新たな可能性を追求した、新感覚のオリジナルアニメだ。

 本作の舞台となるのは、人類を脅かす謎の生命体“ミミナシ”が存在する世界。そのミミナシに対抗することができるのは、“イクイップメント”と呼ばれる戦闘メカを操作することのできる、特別な能力者“祈手(プレイヤー)”のみ。主人公のエコヲ・レック(CV:村瀬歩)は、祈手(プレイヤー)への強い憧れを抱きながらも、スクラップ拾いをしながら日々を過ごす少年だったが、ある日、ゴミ山で記憶喪失の少女・ミュウ(CV:高橋李依)と出会う。彼女の腰には、イクイップメントを呼び出すための装置・AMPと接続できるインプットジャックが空いており、エコヲがスクラップを集めて自作したAMPでイクイップメントを召喚、祈手(プレイヤー)だったことが判明する。やがて二人は、彼女の出自と、エコヲの憧れの存在である祈手(プレイヤー)、ジミ・ストーンフリー(CV:福山潤)の謎を追うための旅に出る。

 つまり物語としては、ロボットアニメの王道でもあるボーイ・ミーツ・ガール的な構造を取っているわけだが、その世界設定の根幹にあたる部分と現実のロックミュージックの要素を、オマージュという形で紐づけることによって、作品に奥行きと新しい間口を加えているのが、本作のユニークなところだ。

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