「コロナ以降」のカルチャー 現在地から見据える映画の未来

深田晃司×濱口竜介が語る、「ミニシアター・エイド基金」の成果とこれからの映画業界に必要なこと

 新型コロナウイルスの感染拡大防止、それにともなう自粛要請によって、全国のミニシアターは閉館の危機に直面している。2月から収益減少は始まり、3月には観客0の回が出てしまう劇場が続出。そして、緊急事態宣言にともない、約2カ月間の休館を余儀なくされた。十分な資本金がある大手シネコンとは異なる経営規模の小さいミニシアターにとって、それは死刑宣告にも等しかった。

 そんな状況の中、立ち上げられたのが、映画監督である深田晃司と濱口竜介が発起人となった「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」。「外出自粛の状況があと3カ月続いた時に、閉館の危機に直面する運営団体」を対象に、日本独自のミニシアター文化を守るためのクラウドファンディングだ。

 SNS上で立ち上げ時から大きな話題となった本施策だが、蓋を開けてみれば、文化芸術活動のクラウドファンディングにおいて日本初(※Motion Gallery調べ)となる開始3日間での1億円を達成。約1カ月間の期間を経て、最終的に総額3億3,102万5,487円を達成した。1団体あたりの平均額は303万円になるという。

 緊急事態宣言の終了にともない、徐々に映画館の再開が動き始めている中、「ミニシアター・エイド基金」の発起人である深田監督、濱口監督の2人に、実施の経緯から今回の施策を通して得たもの、そして映画人としての今後の活動まで話を聞いた。

映画界に携わるすべての人にとって勇気に

ーー緊急事態宣言は解除されましたが、この数カ月の間に映画界は大きな危機にさらされています。そんな状況の中で、「ミニシアター・エイド基金」が3日で1億円、最終的に3億を超える金額を達成したことは多くの映画人を勇気づけました。改めて、立ち上げの経緯から教えてください。

濱口竜介(以下、濱口):3月末に名古屋シネマスコーレの副支配人・坪井篤史さんのインタビュー記事を読んだことが最初のきっかけでした。僕の作品も上映していただいた場所であり、舞台挨拶にも呼んでいただいた場所です。そんな身近な場所が休館・閉館が目の前にある状況に追い込まれている。だとすれば何かをしなくてはいけないと。それから知り合いの映画館の皆さんの声を聞いて、何かできないかと思案して、『ハッピーアワー』のプロデューサーたちとMotion Galleryの大高健志さんに声をかけた直後に、深田さんから声がかかりました。

ーーちょうど濱口さんが動こうと考えていたときに深田さんも同じ考えだったと。

深田晃司(以下、深田):そうですね。それなら一緒にやりましょうと始まりました。私も濱口さんも、作品のほぼすべてがミニシアターで上映されてきましたし、監督になる前からも好きな映画の多くはミニシアターで上映されていた作品でした。いわば、ミニシアターによって映画監督にしてもらったようなものです。国の補償もはっきりと見えず、多くのミニシアターが大変な状況になっている。自分自身を育ててもらったミニシアターのためにも、なんとかしたいという思いでした。結果としてそれが映画文化の多様さを守ることにつながればと。

ーーそして、4月13日の13時からクラウドファンディングが開始されると、開始3日間で1億円を達成しました。この速さは誰も想像していなかったと思います。

深田:3日での1億円達成は本当に驚きました。もちろん、全国のミニシアターの数を考えれば、1億円は越えなくてはいけない目標と設定はしていたんです。ただ、Motion Galleryでの最高金額が約7000万円と聞いていたので、容易ではないだろうと。私もクラウドファンディングを何回かやったことがあるので、そんなに簡単に集まるものではないと分かっていました。なので、1カ月きちんと宣伝をして、条件を達成できればと思っていたのですが……。予想外のスピードに感謝したと同時に、映画ファンの思いを甘く見積もっていたんだなとも感じました。最終的に「ミニシアター・エイド基金」は、2万9926人の方がコレクターになっていただきました。ミニシアターに無くなって欲しくないと願う方が2万人以上はいると数字として可視化できたことは、映画界に携わるすべての人にとって勇気になるものだったと思います。

濱口:ミニシアター、映画文化を、この状況下で少なからぬお金を払うというアクションを取ってまで守りたいと思う人がこれだけいる。映画ファンと言っても漠然としか見えていなかった存在が、こうして可視化できたことは本当に大きなことだと思います。

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