志賀廣太郎さん、俳優・スタッフから愛され続けたその人柄 『三匹のおっさん』追悼放送に寄せて

 わたしが志賀さんと出会ったのは演劇科の学生時代で、2年間ドイツ語の授業や舞台の演出を受けた。当時彼は(その後、俳優として名前が売れてからも)母校でドイツ語や演技の授業を講師として受け持っていたのだ。未来を夢見る学生と接することが好きだったんだな、と思う(ここだけの話、ドイツ語の授業は多くの時間が演劇に関する雑談だったけれど)。

 彼が演技者として復帰してからは、一緒に観劇したり、志賀さん出演の舞台を観に行ったりもした。ある小劇場作品に彼が出演した際、終演後にその劇場で打ち上げをするということでわたしも参加させてもらったのだが、宴の終わりに率先して場の後片づけをする姿がとても印象的だった。こういうお人柄だから、50歳を過ぎて映像の現場に入っていっても、スタッフや若手俳優に慕われ愛されるんだな……と、ひとつの答えをもらった気がする。

 一度、お酒の席で酔った勢いもあったのだろうが「俺、髪型変えたいんだけど」と真顔で言われ「……いや、それはマジでやめた方がいいよ……」と答えたこともあった。あれは冗談だったのだろうか。

 2013年の冬に、仕事として初めてインタビュー取材をさせていただき、志賀さん行きつけの魚がおいしい居酒屋さんで仕事の話を聞いた。その時「絶対に観てほしいドラマがある」というので「どんな作品?」と聞くと「北大路欣也さんと泉谷しげるさんと俺と3人で正義の味方になるドラマ」と返されて腰が抜けた。え、あの時代劇スターや伝説のフォーク歌手と?

 そう、そのドラマが2014年から第3シリーズにわたって放送され、2回のスペシャル版も製作された『三匹のおっさん』(テレビ東京系)である。

 代表作ともなった『三匹のおっさん』シリーズで志賀さんが演じたのは“頭脳派のノリ”こと有村則夫役。まさに「昭和のおじさん」感を活かしたノリのキャラクターは、どこかいたずらっ子のようでもあり、ご本人と重なる気もする。大御所ふたりに挟まれて、変な発明品で敵を撃退する様子は本当に楽しそうで、観ているこちらも笑顔になった。

 最後にひとつだけ書かせてほしい。

 さまざまなメディアがきっと好意的に使っている「名脇役」という単語が、わたしにはどうもしっくりこないのだ。確かに50歳を過ぎて世に出た彼が主役を張る機会はとても少なかったけれど、志賀さんはどの役も全力で、そして真摯に演じていたと思う。担うキャラクターに精いっぱいの光を当ててきた彼は「脇役」だったのだろうか。

 志賀廣太郎さん、千穐楽までお疲れさまでした。皆、ドラマの再放送であの低音ボイスが聞こえるたびにあなたのことを思い出すよ。忘れないよ。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
月曜プレミア8 志賀廣太郎さん追悼ドラマ『三匹のおっさん3〜正義の味方、みたび!!〜』(再放送)
5月4日(月)20:00〜21:54
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送にて放送
出演:北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎、大野拓朗、三根梓、西田尚美、甲本雅裕、藤田弓子、中田喜子ほか
原作:有川浩『三匹のおっさん』シリーズ(講談社)
脚本:深沢正樹
監督:猪原達三
プロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
企画・プロデューサー:井上竜太(ホリプロ)
(c)有川浩/講談社(c)テレビ東京/ホリプロ

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