林遣都ロスのあなたに Netflix『火花』ほか、必見“関西弁ドラマ”で振り返るその実力

 林遣都ロスである。

 2019年10月から2020年3月まで半年間、朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)で林遣都を観ていたので、終わってしまってからはなんだか朝が物足りない。主役ではないから毎回出ていたわけではないが、終わってみて振り返ると、林遣都演じる信作のシーンが鮮やかに蘇る。

 信作は主人公・喜美子(戸田恵梨香)の幼なじみ。年頃になると、喜美子の妹・百合子(福田麻由子)と結婚する。滋賀県の信楽に生まれ育ち、市役所に勤め、地元を盛り上げるために全力を尽くす。おそらく死ぬまで信楽で過ごすだろうと思わせる人物を、滋賀県出身の林遣都が演じることは同郷の方々にとっては嬉しいことだったろう。やっぱり地元言葉が自然でいい。林遣都の関西弁はいかにも関西弁ですという感じではなくやわらかに響く。兵庫出身の戸田恵梨香とのやりとりも自然に楽しい感じが漂っていた。

 というわけで、『スカーレット』のほかに、林遣都が関西弁を使っているドラマで、配信で観ることができる作品をいくつか挙げてみたい。

『京都人のひそかな愉しみ Blue 修行中』(NHK総合)

京都人の密かな愉しみ Blue 修業中 祇園(ぎおん)さんの来はる夏 PR動画

 滋賀県出身の林の関西弁は大阪よりも京ことばに近いのではないかと想像する(あくまで想像です)。だからこそ、京都を舞台にした青春群像劇『京都人のひそかな愉しみ Blue 修行中』(NHK総合)シリーズ「送る夏」(2017年)、「祝う春」(2018年)、「祇園さんの来はる夏」(2019年)の植木職人・見習いの「若林ケント幸太郎」はぴったり。「(若)林ケント(幸太郎)」とは林遣都に当てた役としか思えないが、イギリス人と日本人のハーフ設定で、母親(秋山菜津子)は中京区でBARをやっている。林はナレーションもやっていて、やっぱりやわらかな関西のことば。完璧に京都ことばかというとまた違うのかなとも思うが(その点、京都出身の吉岡里帆はさすがなのである)、ハーフ設定でそこは曖昧になっているのかもしれない。

 このドラマでは林演じる職人のかっこよさが光る。仕事に集中する顔つき、手付きが迫真なのと、職人の仕事着が凛々しい。ハーフ設定で、もともといわゆるバタくさい顔だちながら、頭に手ぬぐいを巻いてもお似合いである。さらに、浴衣をピシッと着て祇園祭に参加するため横笛を吹いている姿にも風情があった。顔は濃い目にもかかわらず、和の精神がみなぎっているのである。「京都人のひそかな愉しみ」は京都の風景も眼福で長く続いてほしいドラマである。

 林遣都と京都といえば、『京都人のひそかな愉しみ』の前に、『漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』(NHK総合)がある。京都生まれの画家・津田青楓役で、主人公・漱石(豊川悦司)を京都でもてなす。出番はさほどないが、この作品でもナレーションもやっている。やんちゃな地方都市の青少年を演じることもできる林だが、着物を着ると、キリっとして、清潔感と利発さが増幅するように思う。着物の襟元がすきっとなるのは着付けのスタッフさんがうまいのかもしれないが、本人の体型および精神性の現れなんだろうと感じる。

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