「これが信長?」から一転、賞賛の声続出 染谷将太が『麒麟がくる』で見せた“演技力の高さ”

 さらに第10回「ひとりぼっちの若君」では、長谷川博己演じる主人公・明智十兵衛(光秀)と対面。鉄砲を通して十兵衛の能力を瞬時に見極めようとする鋭い観察眼、信長と母との関係性を語るなかで見せる、自分を認めない人間への寂しさや、そこに起因する激しい怒りなど、十兵衛との短い対峙シーンだけでさまざまな感情を表現した。ある意味で、これまでの俳優のようなビジュアル的な男臭さを使わず、信長の持つ「魔王」「革命児」という個性を示した。染谷の“演技力の高さ”を改めて認識させられる場面だった。


 第10回の放送が終了すると、SNS上でも染谷が表現した信長に対して賞賛のコメントが溢れた。特に過去の信長を演じた俳優と比べ、染谷のビジュアルが“おだやか”から入っていたため、母親からの愛情の欠落による狂気さや冷徹さといった、落差に魅了されている人が多かった。

 もともと染谷と言えば“これ誰ができるの?”という難役を演じる機会が多いが、物語が終わるころには、しっかりと手の内に入れ「適役だったな」と思わせるほどの芝居を見せる。

 過去には、映画『3月のライオン』で、ふくよかな体型の棋士・二海堂晴信を演じているが、毎回2時間以上の特殊造形を施し、ぽっちゃり体型になった。正直、二海堂の体型に似た俳優を使うというのが一番のセオリーのように感じるが、メガホンを取った大友啓史監督はインタビュー時に「普通一人だけ特殊造形でキャラクターを作ったら浮いてしまうかなと思ったのですが、うまくはまった」(参考:【インタビュー】映画『3月のライオン』大友啓史監督、「人生について考える青春映画を作った」 - トレンドニュース)と染谷だからこそ演じられたことを強調していた。

 さらに、NHKの連続テレビ小説『なつぞら』では、広瀬すず演じる主人公・なつの後輩はアニメーター「神っち」こと神地航也に扮した。番組公式には言及されていないが、神地のモデルとなったのは宮崎駿だと言われている。ある意味で難易度の高いキャラクターだが、飄々とした佇まいながらも、圧倒的な実力で東洋動画の風雲児として、宮崎を想像させるような面影を見せた。

 その他、実写版『聖☆おにいさん』シリーズのブッダも、やや“無理め”なキャラクターながら、しっかり手の内に入れて、視聴者から賞賛を浴びた。

 先日キャストが発表された4月10日スタートのテレビ東京系ドラマ24『浦安鉄筋家族』(テレビ東京)では、岸井ゆきの扮する桜の彼氏で服が脱げやすい天然変態の花丸木を演じる。どんな仕上がりになっているのかはオンエアを観ないと分からないが、原作コミックの花丸木は、相当強烈なキャラクターで、そのまま実写化すると、放送コードに引っ掛かってしまわないか……というドキドキ感もある。こちらも染谷なら、きっと満足させられる花丸木になるのでは……といまから期待が高まる。

 金曜日の夜に花丸木を演じ、日曜日の夜には信長……。4月からの週末が非常に楽しみだ。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin
 

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