謎解きからアクションまで 『シロクロ』は『あな番』以降の日曜ドラマの魅力を凝縮

 『あな番』は、マンションの住民会で起きる「交換殺人ゲーム」の謎解きと真犯人を追求していく。最近では珍しい2クールあるドラマだけに、多くの登場人物の考察ができる面白さと、1クールの最後に主人公の妻が殺されるなど衝撃的な展開に、SNS上では考察ブームが巻き起こった。真実が暴かれていくごとに主人公が辛い現実と向き合う、この展開は『シロクロ』でも今後の鍵となるだろう。また、横浜が2クール目からマンションに入居してきた大学院生として登場。主人公の翔太(田中圭)の相棒となり、AIを駆使し謎を解いて行くのだが、人見知りで謎の行動も多く、純粋な男なのかサイコパスなのか分からないキャラで、一瞬だけ見せた敵を一掃する空手の達人ぶりに彼の背景の謎がさらに深まった。おそらく横浜の特性を活かしたいためのシーンだったのだろう。このドラマに出演したことで、横浜が空手の猛者でアクション俳優としても認知されるきっかけに。このキャラが『シロクロ』の直輝役の過去と言っても不思議ではなく、チラ見せだったアクションが思う存分堪能できる。

 『ニッポンノワール』は、犯罪に巻き込まれるも記憶がない刑事が、次々と驚異的な事実に直面していく話で、前2作に比べSF的な要素があり、現実社会の常識では考えられない設定にしたことで考察ファンを混乱させ、これまでと差別化を計っていた。近年のドラマの中でもトップクラスのアクションが満載なのも特徴的で、SFチックな分、魅せるアクションで楽しませ、そして最後は特撮映画の世界となり視聴者を驚かせた。このドラマを挟んだことにより日曜ドラマがシフトチェンジしたことで、いつ『シロクロ』の展開が現実離れしてもおかしくない。また、『3年A組』と世界観を共有し、出演者が同じ役で登場したことでも話題となるが、『シロクロ』には『あな番』で共演した田中圭も横浜の父親役として友情出演し、「日曜ドラマティックユニバース」ができつつあるのも面白い。

 『シロクロ』は、『あな番』以降の日曜ドラマの魅力を凝縮したような作品だということが系譜を知ると分かる。それを踏まえた上で、表向きは可愛い女性ヒーローものにしたというエンターテインメントの面白さと、究明しようとしている真実は果たして主人公を幸せにするのか分からない、でも視聴者は真実を知りたい、そのダークヒーロー特有の葛藤が『シロクロ』の面白さだと思う。また、たとえ主人公のやり方が間違っていても、テレビ離れの原因ともなっているコンプライアンスやSNS上での反響にあえて挑む制作側の姿勢が、今の日曜ドラマが愛される理由ではないだろうか。

(文=本 手)

■放送情報
『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜23:25放送
出演:清野菜名、横浜流星、要潤、白石聖、山崎樹範、山口紗弥加、佐藤二朗
監督:遠藤光貴
脚本:佐藤友治、蛭田直美
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー:福田浩之(読売テレビ)、馬場三輝(ケイファクトリー)、千葉行利(ケイファクトリー)
共同プロデューサー:池田健司(日本テレビ)
制作協力:ケイファクトリー
制作著作:読売テレビ
(c)読売テレビ

関連記事