『麒麟がくる』吉田鋼太郎劇場再び! 長谷川博己、玉置玲央と発揮された舞台俳優としての真髄

 明智光秀を主役に描く長谷川博己主演のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。第5回が2月16日に放送され、第13代将軍・足利義輝(向井理)や将軍奉公衆の細川藤孝(眞島秀和)が初登場した。

 さらに、第1回の放送で「存在感がすごい」と話題を呼んだ吉田鋼太郎演じる松永久秀と光秀が再会。鉄砲の「抑止力」について語るシーンや、遊女屋の場面での緩急ある芝居で、“吉田劇場”を繰り広げた。

 制作統括の落合将氏が、「『麒麟がくる』には、美濃、尾張のベースメントと、京都の幕府という柱が、どう関わっていくのかを、光秀の目を通して描く大きな仕掛けがある。そのなかで、オリジナルキャラクターである伊平次(玉置玲央)を登場させながら、京都側の描写を見せた」と語る第5回。

 第1回放送時に「まるでRPG」とSNSでも話題に上った『麒麟がくる』だが、今回のタイトルはズバリ「伊平次を探せ」であり、演出の藤並英樹氏が「光秀が主体的に行動して、RPGのように伊平次を追いかけながら京都の実情を知り、鉄砲の抑止力的な思想や、京都の権力闘争の関係を知っていきます」とコメントする通り、まさにRPG感溢れる展開となった。

 鉄砲は実戦に向かないと考える光秀だが、斎藤道三(本木雅弘)の命を受け、なぜ将軍家が鉄砲を大量に必要としているのか探るため、また、腕利きの鉄砲鍛冶・伊平次に会うため、京の「本能寺」へ向かう。“本能寺”というパワーワードに、「本能寺フラグ」「光秀ミーツ本能寺」「本能寺いただきました!」とSNS上は大盛り上がり。

 ふたたび京へとやってきた光秀は、本能寺の前で、持っていた鉄砲を細川藤孝に咎められ、刀を向けられる。それを本能寺から現れた馬上の足利義輝が制する。

 「義輝は武家のトップであり、光秀が尊敬している人。そんな人と初めて会う。神々しさや、アイドルに初めて会ったときのような感じが、向井さんからよく出ていた。眞島さんは太刀の構えもすごくキレイで、長谷川さんと対峙したときに、お互いに剣の達人として説得力があった。向井さんも眞島さんも、女性だけでなく同性からもステキに映る人物」と藤並氏。

 続けて光秀は藤孝の異母兄弟である三淵藤英(谷原章介)と再会。長谷川と谷原に加えて、向井と眞島が登場したことで、SNS上も「公方様!!」「イケオジパラダイス」「眼福タイム!」と狂喜乱舞の状態に。

 さて、情報に基づいて本能寺へと来たものの、ここにも伊平次はいないと聞いた光秀は、三淵とともに、松永を訪ねる。お灸を据えながらの松永の第一声、「アツゥイ!」から、吉田がさすがの存在感で登場した。

 『麒麟がくる』の芝居は、基本、ベテラン脚本家である池端俊策(『太平記』)のセリフ通りに進んでいると思われるが、舞台でならした吉田の表情や動きからなるアドリブとしか思えない姿も印象的だ。クスリとした笑いを誘いながら、締めるところはきっちり締める。この回でも、随所で笑わせつつ、三淵が去った後、「鉄砲を持つ意義」を光秀に説いて見せる場面では、重厚な芝居を見せた。

 鉄砲の存在に疑問を投げる光秀に、「動くな!」と、イキナリ銃口を向けた松永。光秀は身動きできなくなるが、松永の銃に弾は込められていなかった。「弓矢や槍ならかわせる。しかし銃の怖さを知る者は、向けられただけで身動きができない。弾が当たるかどうかではない! 鉄砲はそれだけで抑止力になるのだ。敵は鉄砲を何丁持っている? こちらの3倍? ならば戦はやめておこうとなる。戦は変わる」と語る松永。「鉄砲の真の力とは、お互いをけん制させ、戦を減らす抑止力になることだ」と。

 “戦を減らす抑止力に”と言うが、この後、時代は戦国時代へ突入していくわけで、それを知っている我々には、今の世についても改めて考えさせられる演出だった。

 三淵には言わず、実は伊平次の居場所を突き止めていた松永は、光秀とともに伊平次のいる遊女屋へ。女好きなキャラクターを匂わせる吉田版松永の本領発揮といえる軽快な場面となった。

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