木村拓哉の料理シーンが映える理由 『グランメゾン東京』はグルメドラマの限界を押し上げる

 日曜劇場『グランメゾン東京』(TBS系)が12月29日に最終回を迎える。同作では、チームプレイに徹する木村拓哉の演技やかつての仲間が再集合するストーリー展開が話題になっているが、料理に関するシーンも注目を集めている。

 「食」を扱ったドラマは近年増加傾向にある。しかし、実はプライム帯(月-土曜20時~23時と日曜19時~23時)に限るとその数は決して多くない。民放キー局で2010年代に放送されたグルメあるいは料理が主要なモチーフとして登場する作品は『高校生レストラン』(2011年・日本テレビ系)、『ハングリー!』(フジテレビ系・2012年)、『dinner』(フジテレビ系・2013年)、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系・2015年)、『天皇の料理番』(TBS系・2015年)、『ヤッさん〜築地発!おいしい事件簿〜』(テレビ東京系・2016年)、『Chef〜三ツ星の給食〜』(フジテレビ系・2016年)など様々だが、1年あたりで計算すると1、2本ほどと、医療ドラマや刑事ドラマと比べるとその数は遥かに少ない。

 地上波ドラマの主戦場であるプライム帯でグルメまたは料理に関する作品が少ない理由は、大きく3点に集約できる。1点目はドラマの構成だ。料理人と言えば食文化の担い手だが、調理そのものは地道な作業の繰り返しであり、熟練の技術を要する。そのこともあって、調理シーン単体でドラマ的な起伏のある展開を生むことは難しく、登場人物や舞台設定との組み合わせで物語の推進力を生む工夫がされてきた。

 2点目に、映像作品特有の「味をどのように伝えるか」という問題がある。テレビの前の視聴者は作品に登場する料理を味わうことができない。そのため、高級食材を扱う場合には、味と反比例するようにリアリティを欠いた描写になりがちだ。3点目は、制作サイドの課題である。一般的に料理のグレードが上がると食材の管理や調理の手順が複雑化し、準備の手間もかかる。ロケやスタジオの環境に合わせて提供体制を整え、食材や調理スタッフ、配膳の専門家を確保しなければならない。

 『グランメゾン東京』はこれらのハードルをクリアしている。1点目の構成については、ミシュランの三ツ星を獲得するという明確かつシンプルな目標が示される。木村演じる尾花たちが作る料理はこの目標を達成するためのツールであるが、同時に群像劇としての物語のキーも担っている。たとえば、第1話では、尾花が倫子(鈴木京香)のために作ったエチュべは2人がグランメゾン東京を立ち上げるきっかけになった。また、調理シーンで流れる音楽はゲームのバトルシーンを想起させ、エンターテインメントとしての料理を演出する。このように、料理によって仲間との絆を深めながら、最高評価を目指して腕を競うというドラマの基本フレームが確立されているのだ。

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