森七菜、なぜ2019年最大のブレイク女優に? 小学生から結婚する女性まで演じた大躍進を振り返る

 今年1月期に放送された『3年A組 ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)で生徒のひとり、堀部瑠奈役を演じていた森七菜。10代から20代の若手実力派俳優が集結した作品だけあって、ドラマ中盤までは見せ場らしい見せ場を与えられなかったものの、第8話のエピソードで重要な役割を担った途端に潜めていた演技力を覚醒。瞬く間に教室内での存在感を高め、終盤には主要な生徒のひとりとして、監視カメラ映像の解析や特撮ヒーロー愛をあらわにするなど、多くの見せ場を獲得することに成功した。

 同作の放送終了から少し間隔を空け、下半期に入ると彼女は2019年最大のブレイク女優へと進化を遂げたと言っても過言ではない。アニメーション作品を含めて4本の映画に出演。ドラマではゲストとしてのポジションで2作品に出演と、その数だけで考えれば派手さはないものの、そのひとつひとつがあまりにも密度のある、非常に濃い役柄であったように思える。現在18歳、まだキャリア数年の女優とは思えないほど充実した役柄ばかりに恵まれた森七菜の2019年をざっと振り返っていきたい。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 まずはやはり、7月に公開され現在も上映が継続中の新海誠監督作品『天気の子』を挙げないわけにはいかない。興行収入は12月の時点で140億円を突破。新海の前作『君の名は。』ほどの社会現象を起こしているイメージはないものの、それでも日本歴代興収ランキングで現在12位。日本映画に限れば第6位に入る大ヒットとなっており、つまり森は『君の名は。』の上白石萌音と同じく、日本で興収100億円以上を記録した数少ない映画のヒロインという、極めて稀有な存在であるといえよう。雨が降り続く東京に家出してきた少年・帆高が出会う、願うだけで天気を晴れにすることができる不思議な力を持った少女・陽菜の声を演じた森。この役柄に抜擢された段階ではまだほとんど無名だった彼女が見出された理由はいくつも考えられるが(たとえばイメージが定着している有名女優を避けるねらいや、演じるキャラクターに年齢が近い女優を選ぶことでリアリティを求めたことなど)、いずれにしてその選択が最良であったことは作品を観れば明らかだ。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 実写でもアニメーションでも「演技が巧い」ということはどんな役柄にも染まることができるカメレオン的なものであるというイメージが強く、まだスター性を携えていない若い俳優にはその傾向がとくに目立つ。けれども映画というコンテンツにおいては、端的に言えば「どんな役をやらせても〇〇」という圧倒的なスターパワーは欠かすことができない要素だ。『天気の子』における彼女の声の演技は、彼女の存在を認識していればもはや陽菜という物語上のヒロインが森七菜にしか見えなくなるほど強い印象を植え付けてくれるものであった。つまり彼女は、声だけで、自分が森七菜であることを証明することができる才能を有しているわけだ。

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