『いだてん』中村勘九郎から阿部サダヲへ、役所広司から松坂桃李へ つながり続けるスポーツへの情熱
選手たちは「自分のため」に戦うことを決めていた。「国のため」ではなく「自分のため」に。そんな選手たちの姿を見て、田畑は「変わったよねえ」と口にしたが、菊枝は「変わったんじゃない。変えたんです」と言った。彼女たちの意志は「変えようとする者」から引き継がれたものだ。スポーツに情熱を掲げたシマ(杉咲花)、たった一人で陸上を駆け抜けた人見絹枝(菅原小春)、「がんばれ」を背負いながら泳ぎ続けた前畑秀子(上白石萌歌)。
彼女たちによって敷かれたレールを、選手たちは走り、また次の人々へとつなげていく。人見の「私は、走ることが大好きです!」という言葉が思い出される。河西の「私たちは青春を犠牲になんかしていない!」という懇親の叫びは、シマ、人見、前畑ら、スポーツを愛した人たちと同じ、スポーツへの情熱に満ち溢れた台詞である。
「いだてん紀行」に出演した東洋の魔女メンバー・谷田絹子氏は「『勝ってよかったね』ってみんな喜んでくれているけど、あんたのためやない、自分のためやって」と言った。
「人のために、できますか?」と。
四三も田畑も「国のため」というプレッシャーや責任に押しつぶされる瞬間はあったが、彼らもまた「自分のため」だからこそ情熱を掲げることができた。
第1回からつながり続ける、人々のスポーツへの情熱。最終回まで残りわずかだが、この情熱が「いだてん」のように駆け抜けるのだと思うと胸が高鳴る。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/