『Dr.STONE』は“豊かさ”への気づきを与えてくれる “クラフトもの×ジャンプ漫画”の圧倒的面白さ

 本作は2019年7月よりアニメが放送中。原作漫画の世界観や魅力が、次々と理想の形でアニメーションに変換されていく。

 何より、緑生い茂る「石の世界(ストーンワールド)」がカラーで描かれたことが大きい。原作でもその美麗な作画で森林の雄大さが表現されているが、色鮮やかな映像で描かれると、また一味違った「威力」を発揮している。そう、本作における最大の敵は、地球、あるいは大自然そのものなのだ。それが印象的であればあるほど、「大自然相手に科学で戦う」という千空らの奮闘が際立つ。

 主義主張が異なる者同士での戦い、アクションシーンもふんだんに盛り込まれた本作。アニメーションで描かれるそれらは、言わずもがな迫力抜群。真っ暗な世界に灯される電気や、大自然で爆発する火薬など、スケールの大きな世界観設定を演出や美術がしっかりと支えていく。キャラクターの細かな所作が積み重なる駆け引きも、台詞の細かなニュアンスを音で受け取ることで、面白さが何倍も増している。

 また、千空の声を担当する小林裕介の熱演も見所だ。いわゆる「主人公らしい」キャラクターではない、ともすれば悪役のような立ち振る舞い。そんな、司令塔かつ参謀でもある千空を、「悪役」と「主人公」を両立させながら造り上げる。ひとつひとつ、言葉の重みを感じさせながら口を開く千空に、思わず視聴者も心を奪われていくのだ。まるで、彼の旗のもとに仲間が集っていくかのように。

 石化のその時、宇宙では何が起きていたのか。文明が崩壊したのに、どうして集落が存在するのか。物語はマクロな謎を配置しながら、ミクロな奮闘を積み上げていく。そこにある「地道に頑張ることの尊さ」は、地球や大自然と比較してしまうと、とても小規模なものだ。しかし、その「小さい」の積み重ねこそが、我々現代人の生活を間違いなく支えている。

 途方もない環境に何かを持っていけるとしたら、それは「科学」か。あるいは「文明」か。『Dr.STONE』は、人々が当たり前に享受する「豊かさ」への気づきを与えてくれる。我々の日々の「小さな」努力も、数千年後、誰かの生活を支えているかもしれない。

■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』Twitter

■放送情報
『Dr.STONE』
TOKYO MXほか 毎週金曜日22:00〜
原作:稲垣理一郎・Boichi
(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:飯野慎也
声の出演:小林裕介、古川慎、市ノ瀬加那、中村悠一、沼倉愛美、佐藤元、前野智昭ほか
公式サイト:https://dr-stone.jp/

関連記事