『スカーレット』喜美子は歴代屈指のタフなヒロインに 草間×大久保、2人の師匠から受け継いだ心

 NHK大阪放送局が制作する10月スタートの朝ドラは、東京制作が手がける朝ドラとはどこか雰囲気や印象が異なり、独特の魅力を感じさせるものである。

「女にも意地と誇りはあるんじゃ!」

 意地と誇り。それはこれまでの『スカーレット』(NHK総合)の随所で描かれてきた。上記の台詞は喜美子(戸田恵梨香)がまだ幼い頃に、父親の常治(北村一輝)にぶつけた言葉であり、彼女は昔からタフな一面を見せてきた。戦後ということもあり、決して裕福とは言えない生活が続くところから始まる本作。「食べる」ということ一つとっても、質素な暮らしが続いた。

 もちろん『スカーレット』に限らず、朝ドラではヒロインが人生の中で苦労を重ねる場面はしばしばあるもの。10月スタートの最近の作品で言えば、『べっぴんさん』『わろてんか』『まんぷく』などが挙げられ、程度の差はあれ、ヒロインたちは様々な困難に直面してきた。ただ、『ぺっぴんさん』のすみれ(芳根京子)も、『わろてんか』のてん(葵わかな)も、『まんぷく』の福子(安藤サクラ)もそれなりに育った家庭は裕福であった。その点、『スカーレット』の喜美子は貧しさの中で成長していくだけに、彼女の努力の姿、“強さ”を発揮していく様がひときわ印象に残る。

 さて、そんな喜美子は成長して、より“強く”なっていく中で、周りのいろいろな人々の影響を受けてきた。中でも草間(佐藤隆太)の存在を抜きに、喜美子の成長を語ることはできないだろう。喜美子の人間的成長、あるいは喜美子の“強さ”に磨きがかかったのは草間との出会いがあってこそ。「草間流柔道」を通して、彼は喜美子たちに次のように伝えた。

「柔道と言う武道を通し、本当の“たくましさ”とは何か、本当の“やさしさ”とは何か、本当に“強い”人間とはどういう人間か、そして、人を敬うことの大切さを学んでほしい」

 単に肉体的・精神的にタフであること以上に、生きる上で知っておかなくてはならないことを教えてくれた草間。まずは、道場の掃除をさせたことに象徴されるように、彼は人として持つべき姿勢、敬意や感謝の気持ちの大切さを説いた人だった。それらがやがて本当の意味で人間の“たくましさ”や“強さ”につながることを知っていたのだろう。喜美子からみなぎる力強さの土台には、間違いなく「草間流柔道」で培ったものがある。

 他にも草間との間にはいくつかエピソードがある。例えば、まだ草間から柔道を教わる前のこと、喜美子は草間から注意を受けたことがあった。かつて慶乃川(村上ショージ)の焼き物を見せてもらったときに、「ただのゴミやん」などと言ってしまった喜美子。そんな喜美子に対して草間は、“人の心”について説く。「人の心を動かすのは作品じゃない。“人の心”だよ」。その時、喜美子は自分の未熟さを反省させられるとともに、人の心の存在の意義を知る。 

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