松本穂香は「意外と肝が座っている」!? 『わたしは光をにぎっている』中川龍太郎監督が秘話明かす
映画『わたしは光をにぎっている』の完成披露試写会が10月23日にスペースFS汐留で行われ、キャストの松本穂香、渡辺大知、徳永えり、光石研、監督の中川龍太郎が登壇した。
第39回モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した『四月の永い夢』を手がけた中川監督の最新作となる本作。両親を早くに亡くした20歳の宮川澪が、長野・野尻湖のほとりから父の親友であった京介を頼って上京し、彼が1人で経営する銭湯の仕事を手伝うように。銭湯にたむろする常連客たちと次第に親密になっていき、東京での日々が少しずつ楽しくなっていく。しかし、銭湯が近いうちに閉店する運命にあることを知った澪は、ある決断をする。
変化する時代と町を描こうと思ったきっかけについて、中川監督は「僕は、神奈川の登戸という町の出身で、昔は下町らしい雰囲気が残っていて、失恋した時に地元の床屋に慰めてもらったりした思い出の場所なんです。だけど、久々に行ったら、町ごとなくなって箱のような家が林立していたんです。『これは僕の故郷でもなんでもない』と傷ついたのが本作を撮るきっかけなんです。もともと、その街で母と父が出会って、僕が産まれて、祖父に銭湯に連れて行ってもらって……という世代間のコミュニケーションができた場所なのに、その場所自体がなくなってしまった。しょうがない部分もあるとは思うんですけど、そのことに、今まで生きてきた一部が破壊されたような感覚を覚えて、本作を撮る原動力になりました」と思いを語った。
そんな本作で、初めて都会の生活を送り、いろんな人たちに出会い、居場所を見つけていく主人公・澪を演じたのが松本だ。自身と当て書きで作られた澪との共通点を聞かれると、「私も澪と同じで、器用な性格じゃないですね。脚本を読んでいても心に刺さるものがあって。監督はそういうところもわかった上で、私に澪を演じさせてくれたのかなと思っています」と語った。
中川監督は、松本との出会いについて「松本さんが東京に出てこられた時にたまたま知り合って、久々に会ってみたらだいぶ変わっていて……」と振り返ると、渡辺は「(東京に)染まった?」とツッコミ。中川監督は、「染まったのかもしれないね(笑)」と苦笑しながら返し、会場は笑いに包まれた。
松本は澪について、「どこかちょっと甘えて生きてきたところもあって、パッと見、弱々しい人に見えるけれど、そんなことはなくて、芯の強い子なのかなと思って演じていました」とコメントし、自身と共通する部分を尋ねられると「『意外と肝が座っているよね』って言ってもらうことはありますね。あんまり深いこと考えていないのかもしれない……。『頑張ればなんとかなるだろう、なんとかしなきゃ』という気持ちで生きていますね」と答える。そんな松本に、中川監督は「根っこにある気の強さみたいなものは、松本さんにも、澪にもあるように感じますね。僕は、松本さんに『澪は私だから』って怒られましたから」と現場でのエピソードを披露すると、松本は「そんな言い方してないです!(笑)」と反論。さらに、渡辺が「監督が澪になろうとしていたんですか?」とボケて、会場の笑いを誘った。
また、本作を観た時に涙を流したという松本は、「すごく暖かい気持ちになりました。あんなに客観的に自分が出ている映画を観れたことがなかったので、不思議な感覚になりましたし、終わり方もすごく好きで、この映画に出れてよかった、いろんな人に愛されるといいなあと思いました」と振り返った。