『これは経費で落ちません!』に見る、マイナー部署モノの面白さ 非正規雇用の存在も重要な軸に

 ちなみに、1998年に放送された『ショムニ』(フジテレビ系)の主人公たちは総務部庶務二課(通称、ショムニ)で、厳密には総務部に所属していることになる。

 フィクションにおける二課というのは、大抵、変人が集まる落ちこぼれ部署のことだ。ロボットアニメ『機動警察パトレイバー』の特車二課や、刑事ドラマ『ケイゾク』(TBS系)の主人公がいる場所も警視庁捜査一課弐係だった。

 ショムニのOLたちは、備品の取替えや社内イベントといった地味な仕事を淡々とこなし、定時で退社するため、やる気がないと思われているが、実は、社内の情報通や、占いの天才、社長の愛人といった特殊技能集団。その才能を用いて、会社の危機を救うというのが本作の面白さだった。営業や総務といった会社の中心ではなく、地味で一見、目立たない部署が会社の命運を握るという意味においては『これ経』と通じるものがある。

 学園ドラマでいうと、スポーツマンや生徒会の優等生ではなく、地味な文化部に集まった変人たちが活躍するという面白さが、経理や人事といったマイナー部署モノの面白さではないかと思う。

 そんなショムニのライバルとして登場するのが秘書課の女性たちだ。彼女たちも厳密には総務で、幹部クラスのスケジュール管理を中心とするアシスタント業だ。華やかな外見ばかりが注目されて仕事内容は正当には評価されにくいチアガール的存在。『これ経』では、ベッキーが演じる有本マリナが社長お気に入りの秘書として登場。わがまま女の悪役として描かれている。

 一方、石鹸会社ならではと思うのが研究開発室。森若の同期の鏡美月(韓英恵)が所属し入浴剤を開発しているのだが、会社モノでは裏方だった研究者や製造部の人間に注目が集まるのは『下町ロケット』以降の流れだ。石鹸マイスターの留田辰彦(でんでん)が後継者として連れ回しているのが藤見アイ(森田望智)という若い女性なのも今の時代ならではと言えるだろう。

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