大根仁が大河ドラマにもたらしたものとは? 『いだてん』「前畑がんばれ」の裏側を解説

『いだてん』で一番やりたかったことができた

――最後に、『いだてん』にとって第36回がどういう回だったと思いますか?

訓覇:第36回は新鮮で今まで見たことのない話だと思いました。前畑さんのエピソードはスポーツの持っているポジティブなパワーが出てくるピークでもあると同時に、激動の世界情勢とリンクしている感じが『いだてん』を見ていただければ、すごく分かりやすいかと思います。「がんばれ」だけで終わらせない宮藤さんの構成力の巧みさも含めて、まさに『いだてん』で一番やりたかった「ためになるエンタメ」ができたと思います。『いだてん』は、何かメッセージを送ろうというわけではなく、今まで描かれていなかったこの時代のお話をエンターテインメントとして、しっかり描くことを一番に考えています。この時代のことは僕も知らなかったので、こういう歴史的な経緯があって、その後オリンピックを返上したという事実が、できるだけ正確に伝わればいいなと思っています。

大根:スポーツという概念すらなかった国で、金栗四三(中村勘九郎)さんと三島弥彦(生田斗真)さんがストックホルム五輪に出場するというところから描いてきた『いだてん』のターニングポイントとなる回だと思います。ベルリン五輪は、戦前のオリンピックにとってはもちろん日本のスポーツ界にとってもある種のピークでもあり、ベルリンが終わった後から全く別の物語が始まります。こういう重要な回を演出できてすごく嬉しかったです。改めて最後の10ページを井上さんに頼んでよかったと思いますね(笑)。

(取材・文=成馬零一)

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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