駿河太郎×尾上寛之の先輩芸人姿がアツい! 『べしゃり暮らし』に盛り込まれた“お笑いのセオリー”

 松本世代の逸話は、ほかにも盛り込まれている。前出のデジタルきんぎょの金本と藤川(尾上寛之)は、昔は仲が良かったが、今では口も聞かない。これも、松本世代に言い伝えられた「コンビは仲が悪いもの」、というセオリーが投影されたものだと思われる。

 しかし、ドラマの中では、若い上妻と辻本と出会ううちに、金本と藤川も変わってくる。今までは楽屋も別で、打ち合わせをするにも、構成作家を伝書鳩のように使って会話していたふたりが、舞台前、どちらからともなくネタ合わせを始めるのだが、そのことでこれまでとは違った良いネタが実現しているというシーンは、胸が熱くなるものがあった。彼らが目を合わせないのも良い。長い年月、会話をしていないもの同士の照れのような空気感が伝わってきた。

 このデジタルきんぎょを演じているのが、駿河太郎と尾上寛之なのだが、2人の演技が良い。ドラマの中では、この2人が、上妻と辻本を上手に芸人の道へといざなっているし、そして逆に、若い2人に良い影響を受けて変わっていく姿が描かれている。演技という面で見ても、先輩の駿河と尾上が、若い間宮や渡辺を引っ張っているようにも見える。

 演出は劇団ひとり。彼は映画『晴天の霹靂』でも、監督として大泉洋演じる、うだつのあがらない手品師の内面の変化と、手品という芸の変化を重ね合わせて描いて感動を呼んでいたが、今回はどうなるのだろうか。

 4話の時点では、きそばATのアマチュア時代を描いていたが、今後はプロになり荒波に飲まれる展開になるのだろう。その経験を経て、学園の爆笑王であった上妻のネタの演技が、どれくらい変化し、成長していくのかがひとつの見どころのような気もしている。

※辻本潤の「辻」は二点しんにょうが正式表記。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『べしゃり暮らし』
テレビ朝日系にて、7月スタート 毎週土曜23:15~0:05放送
出演:間宮祥太朗、渡辺大知、矢本悠馬、小芝風花、堀田真由、浅香航大、尾上寛之、駿河太郎、徳永えり、寺島進
原作:森田まさのり『べしゃり暮らし』(集英社)
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)
制作:テレビ朝日、東映
(c)テレビ朝日
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