『いだてん』で上白石萌歌が再び泳ぐ 『3年A組』景山澪奈と“真逆”の競泳界スターに

 中村勘九郎のアツい“走り”から、阿部サダヲの“爆走”へとバトンが手渡され、ますます盛り上がりがヒートアップする大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)。画面の中心を占める俳優たちの顔ぶれも様変わりしているが、その中でも強い存在感を示しているのが、本作が大河ドラマ初出演となった上白石萌歌だ。

 彼女が演じるのは、実在した女子水泳界の前畑秀子。1932年に開催されたロサンゼルスオリンピックの200m平泳ぎに出場して銀メダルを獲得し、当時、若き女子水泳選手のホープとして名を馳せた人物である。……と、史実を記した以上、この後の展開がどうなるのかは分かってしまったことになる。ネタバレといえばネタバレだが、史実なのだからしょうがない。

 さて、そんな中で注目すべきは、これを上白石がどのように体現するのかということである。彼女の演じる前畑は、第二部の主人公・“まーちゃん”こと田畑政治(阿部)の目標である、“スポーツで日本を変える”という想いに並走するメンバーの一人だ。多少時代は進めど、第一部に引き続き女性の活躍はまだ多いとは言えず、その中でも、若い女子キャラクターの中で前畑は中心的なポジションを担っている。まだ女学生とあって初々しく、チームメイトの松澤初穂(木竜麻生)、小島一枝(佐々木ありさ)らとともに、日本選手団に華やかさを与えているのだ。

 しかしやはり繰り返すように、時代が時代である。国際的に力を見せる男子陣とは違い、彼女たちは国際交流の親善目的のための立ち位置や振る舞いを期待されており、水泳での活躍自体はあまり期待されていないようだ。老若男女、とにかく登場人物が多いとあって、女子メンバーの中心的存在ではあるものの、上白石が際立ってフォーカスされることは少ない。その中でも印象深かったのが、“鶴さん”の愛称で親しまれている男子選手・鶴田義行(大東駿介)へ向けたささやかな恋心である。初対面の場での彼への、胸のときめきを思わせる視線の動きと照れたような表情は愛らしく、第二部からの怒涛の物語展開に、清らかな瞬間を生み出していた。“泳ぐ”ことと同様に、こちらも身体表現で説得力を持たせる必要があったのだが、多くの視聴者を微笑ませてくれたことだろう。

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