「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ブレス あの波の向こうへ』
このパイクレットの葛藤に我々観客は115分間翻弄され続けます。15歳の自我を芽生えさせた少年が、流されて生きてきたこれまでを逡巡し、どこへ進むべきか模索する姿は観客個人個人の青春の痛みとも重なるでしょう。その行為のメタファーとしてもサーフィンが見事な装置として機能しているのです。
子どもたちを取り巻くキャストもまた魅力的な光を放っています。少年からの目線を強く意識したキャスティングが、本作に力強く影響を与えているんです。サイモン・ベイカーは柔和かつ渋みを体現しており、子どもが一瞬で虜になり崇拝するようなカリスマ性を抱えつつも、ちょっとした隙に見える意図せぬ大人の恐怖感も表現しています。
またサンドーの妻イーヴァを演じたのは、エリザベス・デビッキ。『コードネーム U.N.C.L.E.』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』を始め、多くの映画に出演する彼女は、近寄りがたくも陰から目で追ってしまいそうになる怪しげな魅力を振り撒きます。来年公開のクリストファー・ノーラン監督最新作にも内定した彼女は、これから更に話題になっていくことでしょう。
ようやく関東も梅雨明けをし、平年の暑さが戻ってきた今夏。スクリーンを通して海へ出かけてみてはいかがでしょうか。
■公開情報
『ブレス あの波の向こうへ』
7月27日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開
原作:『ブレス:呼吸』ティム・ウィントン(佐和田敬司訳/現代企画室刊)
監督:サイモン・ベイカー
脚本:ジェラルド・リー、サイモン・ベイカー、ティム・ウィントン
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影:マーデン・ディーン
出演:サイモン・ベイカー、エリザベス・デビッキ、サムソン・コールター、ベン・スペンス、リチャード・ロクスバーグ
配給:アンプラグド
後援:オーストラリア大使館
2017年/オーストラリア/115分/原題:Breath/カラー/5.1ch/ビスタ/日本語字幕:小路真由子
(c)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd
公式サイト:breath-movie.com