吉高由里子のユルい雰囲気がもたらす効用 『わたし、定時で帰ります。』福永の心は開放できるか
結衣は効率よく仕事を終えて「定時に帰る」ことをモットーとしている。第1話冒頭では人間ドックに行くために有給をとる姿を見せ、行きつけの中華料理屋で嬉しそうにビールを呑みながら小籠包を食べている。客のおじさんたちと楽しそうに話す結衣の姿はCMで見せる吉高のイメージそのものだ。
いつもヘラヘラしているので、イラッとすることもあるが、次々と起こるトラブルにいちいち真面目に対応していたらすぐに心が壊れてしまう。彼女のユルいたたずまいが中和剤となっているからこそ、危機を乗り越えられるのだ。
正直言うと、本作を見るまで吉高のことが苦手だった。演技のうまさは認めつつも、常にほろ酔い気分で生きているような姿を見る度にイライラしていた。今考えると、それは自分も彼女のように生きたいという「羨ましさ」の裏返しの気持ちだったのかもしれない。
結衣は自分を追い詰めるような無理な仕事はしない。だからこそ心に余裕がある。その余裕があるからこそ、苦しんでいる社員たちに寄り添うことができる。
第1話。結衣と同年齢で似たキャリアを過ごしながら真逆の仕事観を持っていた三谷佳菜子(シシド・カフカ)を心配し、彼女が会社を休んだ際にはお見舞いにも伺っている。休んだら自分の居場所がなくなるのではないかと不安に思うあまり必死に働く三谷に対して、東山は新卒で入った以前の職場で、超過労働の果てに事故を起こして意識不明の重体となったことを告白。その時、「誰にどう思われようが無理はしない。ラクに行こう。それが私の働き方だ」と考えるようになり、定時で帰れる職場を探して100社面接を受けた末に今の会社に入ったと語る。つまり、結衣もかつては三谷のような社員だったのだ。
本作に登場する社員たちは自分で自分を追い詰めている。そんな彼、彼女らに対して「無理しなくていいんだよ」と結衣は優しく語りかける。