『腐女子、うっかりゲイに告る。』脚本家・三浦直之が目指す、新しいボーイ・ミーツ・ガールの物語

『腐女子~』脚本家・三浦直之が語る

 NHK総合で毎週土曜23時30分から放送中のよるドラ第2弾『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』がいよいよ6月8日に最終回を迎える。浅原ナオトの『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を原作とする本作は、ゲイをひた隠しに生きる18歳の高校生・純(金子大地)と腐女子の同級生・三浦紗枝(藤野涼子)の出会いを描く青春群像劇。単純なラベリングに抗う少年少女の瑞々しくも切実なメッセージで話題を呼んでいる。

 今回リアルサウンド映画部では、本作の脚本執筆を務め、劇団ロロの主宰者として、カルチャーファンからも注目を集める三浦直之にインタビュー 。原作への思い、脚本執筆において重視したこと、そして演劇とドラマの違い、今後の展望についてまで話を聞いた。

 「カルチャーや物語を愛することが別の誰かを救っていたりする」

ーー『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』の脚本執筆のオファーを受けた時の心境は?

三浦直之(以下、三浦):実はスケジュール上厳しい部分もあったのですが、原作をいただいて読んだらすごく感動したんです。ドラマの7話に当たる部分は、読んでいて涙が止まらなかった。これは自分もぜひ関わってみたいと思って引き受けました。

ーーある種デリケートな題材を含む内容かと思います。プレッシャーはありましたか?

三浦:かなりありました。僕自身は、セクシャルマイノリティーの当事者ではないですし、BLにも詳しくありません。そういう人間が本作の脚本を書くことで、当事者の方たちを傷つけたり、原作の世界観を壊したりしたら本当にいやだと思っていました。ただ、自分ではこの物語は絶対に書けないんです。そんな原作に自分が関わってみることで、今までとは違う言葉が書けるかもと思ったし、自分がこれまで演劇を続けてきたことで得たノウハウが少しでもドラマの力になれたらという気持ちでやりました。

ーー三浦さんのこれまでの活動で得たノウハウにおいて、本作に持ち込んだものとはなんでしょう?

三浦:家族や恋愛といったフレーミングされた関係性をどうしたら解放できるかということは、僕自身演劇のモチーフの1つとして常に考えています。そして、原作もそのモチーフを丁寧に扱っているから、自分が今まで書いてきたことにも繋がると思っていました。あと、『いつ高』シリーズという高校の青春モノの演劇をやってきたので、ドラマにおいて学生たちの会話のリズムを作る部分で力になれるのではと考えていました。

ーー脚本は、基本的には原作に忠実ながらも、三浦さんならではのオリジナルのストーリーやセリフも加わっています。どのように原作との距離を保ちましたか?

三浦:なるべく、自分の色を出さないようにしていました。謙遜とかではなく、このドラマを面白い! と言っていただけるのは、浅原さんとキャスト、スタッフのみなさんの力だと思っています。純くんの葛藤に、変な味付けを絶対にしないということも決めていました。ストーリーに関しては、小説は一人称ですが、ドラマになった場合はたくさんの人たちが出てきて、人称というモノが固定されないから、より群像劇に近くなる。だから、純くん以外のキャラクターに質感を加えることを意識して、原作とは違うエピソードを加えています。

ーーセリフに関してはいかがでしょう?

三浦:僕自身も、純くんや三浦さんと同じようにいろんなカルチャーが好きで、それに救われてきたから、三浦さんがBLを好きだということが純くんにとってポジティブに作用するといいなと思っていました。それでBLを実際に読んだり、腐女子についての本を読んでいる中で、数字を男性に置き換えたり、人物をカップリングする「妄想遊び」が紹介されていたんです。腐女子の方に取材させてもらった時も、そういう妄想を学生の頃からしていたという話を伺って、その想像力って素敵だなと思って。その素敵さを自分も少しでも描けたらなと思い、加えた部分もあります。

ーー当事者の方への取材を通して、改めて気づいたことはありますか?

三浦:本当に繊細な世界だと思いました。BLを愛する人たちの大切にしているルールがあることを知りました。僕も演劇とか漫画が好きだから、外部の人に変にその自分たちの大切にしているルールを脚色されたら腹が立つよな……と改めて悩みました。実際、傷つけてしまった人もいると思います。けれど、何かのカルチャーや物語を愛することが別の誰かを救っていたりする、そのことを描こうという気持ちも強くなりました。

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