主役は福山雅治じゃない!? 群集劇としての面白味を加速させる『集団左遷!!』へのエール

 『半沢直樹』(2013年)、『下町ロケット』(2015年、2018年)などの例を挙げるまでもなく、「日曜劇場」はこれまでにもさまざまな“群集劇”を私たちの前に提示してきた。『集団左遷!!』においても、旗振り役は片岡に相違ないが、部下である営業部員たちも負けないくらいの熱量で頑張っている。その意味で、もはや主役は福山雅治ではなく、すべての出演者である、と言っても良いのではないか。

 片岡たちに課せられた「100億円」というあまりにも大きなノルマ。達成できなければ問答無用で廃店。だが、もし達成できたとしても本部の決定を覆すことになり、決して無傷では済まされない。最後の最後まで予断を許さない展開を手に汗握りながら追いかける、これこそドラマの醍醐味だ。

 ドラマのなかのさまざまな出来事を「絵空事」と切って捨てることは至極簡単である。しかし、それならば人は何のためにドラマを見るのか。福山の演技にばかり気を取られていては、いつまで経ってもこのドラマの本質に到達することはできないだろう。

 視聴率が2桁から1桁のアップダウンを繰り返し、同枠の7月クールには原作・池井戸潤、主演・大泉洋の『ノーサイド・ゲーム』が控えていることが早々に発表されるなど、まるで蒲田支店のように厳しい戦いを強いられている『集団左遷!!』。そんな状況を重ねれば重ねるほど、今後の「頑張り」を応援せずにはいられない。

■中村裕一
ライター。ドラマについて書いたり言ったりするのが得意といえば得意です。Twitter
@Yuichitter

■放送情報
日曜劇場『集団左遷!!』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:福山雅治、香川照之、神木隆之介、中村アン、井之脇海、高橋和也、迫田孝也、増田修一朗、谷口翔太、橋本真実、市村正親、酒向芳、橋爪淳、津嘉山正種、尾美としのり、三上博史、八木亜希子、西田尚美、赤堀雅秋、パパイヤ鈴木
語り手:貫地谷しほり
三友銀行イメージガール:生田絵梨花(乃木坂46)
原作:江波戸哲夫『新装版銀行支店長』『集団左遷』(講談社文庫)
脚本:いずみ吉紘
プロデュース:飯田和孝、中前勇児
演出:平川雄一朗、田中健太
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/shudan-sasen/

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