『大脱出2』は「!?」が連発する謎の映画? シルヴェスター・スタローンの転がる人生を再確認

 どうした!? スタローン!? というわけで『大脱出2』(2018年)である。スタさんとシュワちゃんのダブル主演で贈る脱獄映画『大脱出』(2013年)の続編……なのだが、これが色んな意味で大変な映画になっている。すでに本国からも度を超えてヤバいとの評判が伝わってきていたが、個人的には信じられなかった。手堅いサスペンス・アクションだった映画の続編で、そんな変な映画になるのか? 相棒のシュワちゃんは離脱したが、その代役を務めるのは、出せば映画が安定する男、アクション映画の文鎮ことデイヴ・バウティスタ。前作からの続投でMr.信用できるラッパー、50 Centもいるというし、変なことになりようがないだろうと。しかし……ところがどっこい、実際に変なことになってしまっていた。ジャンルはアクション・サスペンスになるのだろが、超展開と不条理設定、摩訶不思議なビジュアルの連発によって、脳内でマガジン系列の漫画の如く「!?」が連発する謎の映画に仕上がっているのだ。

 スタローンが演じるのは、自ら1囚人として監獄に入り、あの手この手で脱獄してみせることで逆に監獄の穴を指摘する脱獄コンサルタントのレイ・ブレスリン。前作の脱出劇から数年、彼は警備会社の経営者として一線を退いていた。ある日、彼の会社のスタッフであるシュー(ホアン・シャオミン)が色々あった末に失踪してしまう。さらに色々あった末、ブレスリンはシューが「ハデス」と呼ばれる謎の監獄に捕えられていることを知り、自らもハデスへ向かうのだが……と、お話だけ聞けば、これも全く問題ないように思えるが、実際は明後日の方へ爆走している。

 まず、本作の事実上の主役は、ホアン・シャオミン演じるシューであって、スタローンとバウティスタは助演に近い(50 Centにいたってはパソコンの前で「むむむ?」という顔をしているだけだが、それでも全力投球で演技しているのが偉い)。こういうこと自体はよくあることだが、このホアン・シャオミンの扱いも若干おかしいのだ。スタローンと碁を打つのはいいとして、いきなり木人椿を叩き始めるのには驚いた。もちろん木人椿を叩くのは悪いことではないが、「ちゃんシャオってさぁ『イップ・マン 葉問』に出てたっしょ? とりあえず木人は押さえておこうヨ」という偉い人の一声で唐突にブッ込んだ感、にも関わらず真剣に演じるホアン・シャオミンも相まって、謎感が強くなっている。「なんか変な映画だな?」と思っていると、いよいよ本題の謎の施設が登場するのだが、この謎の施設が本当に謎の施設なのだ。

 第一に、獄長が「ガリレオ」を名乗る不思議ロボットなのにビックリだが、注目すべきは謎のルールだ。ハデスでは囚人同士でデスマッチを組まれ、勝利すると1~2時間だけすごく綺麗な部屋で絵画や読書ができる権利をもらえるのだ。かくして囚人たちは文化的な時間をかけてデスマッチを繰り返す。野蛮なのか文化的なのか分からないし、これなら過酷な労働の対価(?)として、ビールや焼き鳥が食える『賭博黙示録カイジ』の帝愛の方が逆に健全な気もするが、そこは個人の価値観の違いとしておこう。ともかく不条理な施設に囚われた主人公は、フラッシュバックするスタローンの教え(私も仕事で疲れると『ロッキー』シリーズのセリフがフラッシュバックすることがあるので、ここは大いに共感できた)に従い、デスマッチに勝って文化的な時間を確保しながら、脱出のために動き出す。

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