Netflixなどの躍進によって大きな変化も? 外国映画のハリウッドリメイクが量産され続ける理由

 車椅子に座る身なりの良い男と、その後ろに立つ黒人の若者。楽しそうな笑顔の2人が並ぶこの映画のポスターには『The Upside』というタイトルが入っているが、すぐにこれが2011年に大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』のハリウッド版リメイクであることに気づいた人は少なくないはずだ。『The Upside』は1月11日にアメリカで公開されると、DCユニバースの最新作『アクアマン』を退けてその週の興行収入第1位につけ、3月1日現在までアメリカでの興収は1億ドルを越えるヒットとなっている。

『The Upside』海外版トレイラー

 外国映画のハリウッドリメイクは、新しい手法ではない。日本人にとってなじみが深いところでは『七人の侍』(1954年)をリメイクした『荒野の七人』(1960年)をはじめ、『ザ・リング』(2002年)、『THE JUON/呪怨』(2004年)や、2007年の第79回アカデミー賞で作品賞を獲った『ディパーテッド』(2006年)も、香港映画の『インファナル・アフェア』(2002年)からのリメイクである。現在もハリウッドでは多くのリメイク企画が進んでいる。いくつか例をあげると、第89回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたドイツの『ありがとう、トニ・エルドマン』(2017年)がパラマウントで、そして2015年の第68回カンヌ国際映画祭出品のフランス映画『Disorder』がコロンビア映画で進行中だし、他にも今年第91回アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表の『立ち上がる女』(2018年)、2014年にフランスで大ヒットとなったコメディ『真夜中のパリでヒャッハー!』、そして2017年の第89回アカデミー賞外国語映画賞のスウェーデンからの出品『幸せなひとりぼっち』はトム・ハンクスの出演予定でハリウッドリメイクが動いている。

 これら外国映画のハリウッドリメイクにあたり、過去のリメイクタイトルと、リメイクが発表された作品を調べてみると、主に3つの基準に当てはまることがわかる。1つはアカデミー賞の外国語映画賞や、カンヌ、トロントなど国際的に重要とされる映画祭で注目を浴びた作品であること(例えばアイスランドの『立ち上がる女』、ドイツの『ありがとう、トニ・エルドマン』、スウェーデンの候補作『幸せなひとりぼっち』などが当てはまる)。2つ目は、前述の映画賞などは取っていないものの、製作国での大ヒット作であること。これらのカテゴリーには最初に紹介した『The Upside』やワーナー・ブラザースで動いている『進撃の巨人』などが当てはまる。そして3つ目は、アカデミー賞やカンヌでの受賞や爆発的なヒットはないものの、ソリッドでユニークなコンセプトを持っている作品である。これらはアイデアが非常に重要となるホラーやコメディに多く、例えば、休暇先で起きた雪崩から家族より自分の身を守ることを優先した夫とその妻との関係を描く『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年)、男が社長の息子の子守りをするだけの静かな夜が、悪友の登場によって想像を絶する夜となるフランスのコメディ映画『真夜中のパリでヒャッハー!』、毎日目覚めるたびに体が変わる男を描く2015年の韓国映画『ビューティー・インサイド』などが当てはまる。

 ハリウッドが外国語作品のリメイクを行う背景にはいくつかの要因がある。まず一つは商業的成功のためのアドバンテージで、すでに外国でヒットした作品のリメイクというのは、リメイク版の商業的成功を占うにあたっては大きなヒントとなるし、同時に既存のオリジナル版のファンも取り込むためのアドバンテージとなる。

 加えて、外国映画があまり観られないアメリカ市場の性格もリメイクを後押ししている。映画を観ることが日本よりもはるかに一般的なアメリカであるが、実は字幕で映画を観ることが日本ほど受け入れられていない。ただでさえひっきりなしに公開されるハリウッド映画に押され、外国語作品がアメリカの批評家から絶賛されることはあったとしても、商業的成功を納めることは非常に難しく、そこに生まれたのが、それらを直接配給するのではなく、自分たちのバージョンを作る、という方法である。もともとハリウッドは世界の映画の中心地という自負もあり、イギリス英語で作られたイギリス作品すら、ハリウッド版を作ってしまうくらいである。

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