『おっさんずラブ』『中学聖日記』『アンナチュラル』……“名台詞”で振り返る、2018年傑作ドラマ

弱い立場の人たちに寄り添う

『僕らは奇跡でできている』(c)関西テレビ


「カメはぜんぜん頑張っていません。競争にも勝ち負けにも興味がないんです。カメはただ道を前に進むこと自体が楽しいんです」

ーー相河一輝(高橋一生)/『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ)

 これまであまりドラマの題材にならなかったテーマが取り扱われる作品が増えたのも2018年の特徴だ。すでに紹介した『おっさんずラブ』のほか、『女子的生活』(NHK)、『弟の夫』(NHK)、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)でLGBTがテーマとして扱われていた。また、『半分、青い』(NHK)と『透明なゆりかご』(NHK)では、発達障害、あるいはそれに類する(グレーゾーン)と思われる主人公が登場している。『僕らは奇跡でできている』もそうした作品の一つだ。

 『僕らは奇跡でできている』は、マイペースすぎる主人公がいつしか周囲に影響を与えていく物語。このセリフは、「ウサギとカメ」の寓話に登場するカメはコツコツ頑張ったのではなく、ただ前に進むことに没頭していたのだと説明するものだが、カメとは一輝自身のことである。とはいえ、彼自身も幼少期は周囲との軋轢に苦しんでいた。理解者と出会い、社会に受けいれられることで、逆に社会に影響を与えるようになったのだ。

『anone』(C)日本テレビ


「生きなくたっていいじゃないですか。暮らしましょうよ」

ーー林田亜乃音(田中裕子)/『anone』(日本テレビ)

 『anone』は、社会からこぼれおちてしまった人たちが偽札づくりを通して「ニセモノ」や「嘘」で救われていく様を描いた。『カルテット』(TBS)などで知られる坂元裕二脚本作として注目を集めたが、寓話めいたストーリーが受け入れられず、視聴率は低迷した。

 このセリフは第5話のもの。社会のどこにも行き場も居場所もないハリカ(広瀬すず)、青羽(小林聡美)、持本(阿部サダヲ)らと擬似家族を作って共同生活をおくる亜乃音がしみじみと呟く。生きる意味なんか考えるから窮屈になる。誰かと一緒に食卓を囲んで、ただ暮らしていければいい。そんなメッセージが込められたセリフだった。

 万能の主人公が登場し、強いものが勝つわかりやすいストーリーもスカッとしていいかもしれないが、弱い立場の人たちに寄り添うのもテレビドラマの一つの役割だと思う。2019年のテレビドラマにも期待したい。

■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter

■放送情報
『アンナチュラル』
12月31日(月)〜1月2日(水)全話一挙放送
12月31日(月)ごご12時〜4時30分
1月1日(火)ごご2時30分〜5時30分
1月2日(水)あさ9時〜11時
※一部放送されない地域あり。詳しくはお住まいの地域番組表にて。

出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子(特別出演)、松重豊ほか
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子(ドリマックス・テレビジョン)、植田博樹
演出:塚原あゆ子(ドリマックス・テレビジョン)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/

 

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