相葉雅紀が最後に見せた切ない涙 『僕とシッポと神楽坂』清々しい最終回に

 トキワとの別れ際、達也は握手をする。そっと手を出し、トキワもそこへ手を合わせる。ぐっと力を込めた達也の手と、それに応えるかのように力を込めたトキワの手から、お互いの信頼以上の思いが通じ合ったように見えた。

 病院へ戻ってきた達也は、トキワが残したメモ書きを見つけ涙する。はじめこそ静かに涙をこぼした達也だが、徐々に体をこわばらせ感情的に涙を流す。

 今作で相葉は、あまり感情的な姿を見せない達也を真摯に演じてきた。しかしこのシーンでは、達也の心の深い部分まで落とし込んで演じたようだ。泣きの演技をする相葉は、恋愛もののドラマでよく見られる“引き留めなかったことへの後悔”は感じさせない。だが彼女に対する強い想いはひしひしと感じる。トキワへの想いを噛みしめるように、声を潜めながら泣く姿はとても切なく、心打たれるものがあった。

 声を潜めながら泣く達也だったが、最後にふと笑顔を見せる。楽しかった日々を確かな思い出として大切にしていこうとする達也らしい笑顔だった。その笑顔からは、いつかトキワ達が病院へ遊びに来る未来が感じられる。清々しいラストとなった。

 『僕とシッポと神楽坂』の舞台は動物病院だが、人と動物の交流以上に、人と人との交流が繊細に描かれたドラマだった。主人公・達也を演じた相葉の、演技に対する真摯な姿勢が活かされたように感じる。また複雑な背景をもつ登場人物が多く登場する作品だったが、シリアスになりすぎなかったのは、毎話登場する動物の愛らしさやドラマ全体に漂う穏やかな空気のおかげだろう。“忙しい一週間で疲れた体と心を癒やす”ドラマであったことに間違いはない。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15(一部地域で放送時間が異なる)
出演:相葉雅紀、広末涼子、趣里、小瀧望(ジャニーズWEST)、大倉孝二、村上淳、矢柴俊博、矢村央希、 かとうかず子、イッセー尾形
原作:たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』(officeYOU 集英社クリエイティブ)
脚本:谷口純一郎、国井桂
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shippo/

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