『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』が浮き彫りにした、“続編映画”の在り方
その意味で、『ボーダーライン』の題材的な面白さというのは、1作目でかなりの部分が使い果たされてしまっているように思える。だから同じ題材で意義ある方向に持っていくためには、一度投げ捨てたヒューマニズムに回帰する道しか残されていなかったのではないだろうか。印象的な俯瞰撮影や、ぞくぞくするような不穏な音楽は、確かに今回も同様に存在するが、それらはあくまで1作目のテーマやコンセプトのなかで使用されていたものであり、本作では十分にポテンシャルが活かされていたようには思えなかった。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、『ブレードランナー 2049』において、方向性の違いによってヨハン・ヨハンソンを途中降板させている。それが成功か失敗かはともかくとして、映画監督は作品のために、ときにそのような決断を必要とする場合がある。本作は、『暗黒街』(2015年)などイタリアでは名を馳せているステファノ・ソッリマ監督のハリウッド進出作である。もちろんヴィルヌーヴ監督ほどの権限を与えられているはずもない彼が、ここで同じような振る舞いができたかというと難しいだろう。
素晴らしくエポックな第1作の後で、その魅力を引き継いだかたちで新しいテーマを押し出した続編を作る。本作は、限られた条件のなかでそれら最低限必要なことが達成できているといえよう。だが、第1作をあそこまで前衛的に仕上げることができたのだから、続編となる本作も、映画づくりのスタイルやテーマを、同様にもっと根本から創出できなかったのかと考えてしまうのは贅沢だろうか。続編映画がオリジナルと肩を並べたり、その魅力を超えることは稀だ。本作が最も浮き彫りにしたと思えるのは、映画界全体の課題である続編映画の在り方であり、根源的な作品づくりの必要性への理解である。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
全国公開中
監督:ステファノ・ソッリマ
脚本:テイラー・シェリダン
出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、キャサリン・キーナー
配給:KADOKAWA
提供:ハピネット、KADOKAWA
原題:Sicario: Day of the Soldado/2018年/アメリカ映画/122分/字幕翻訳:松浦美奈/PG12
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公式サイト:border-line.jp/