木村佳乃×水野美紀、壮絶な演技バトルに注目 『あなたには渡さない』激しい愛憎劇の幕開け
特徴的な台詞にも注目してほしい。完成披露試写会の際、水野は「台詞の裏に隠された感情がさまざまな演出によって色濃く引き出されるドラマ」だと語った。今作で発せられる台詞は、原作を思い起こさせる文学的な表現も多い。しかし、役者陣の熱の入った演技や、音響、照明などの効果により、美しい文体が感じられる台詞は、ドロドロと激しい女たちの心情へと姿を変えていく。原作小説に登場する「ご主人をいただきにまいりました」や「泥棒猫」といった印象的な台詞が、際立たせるような演出とともに登場し、視聴者に強烈なインパクトを与えるのが待ち遠しい。
通子と多衣のバトルに巻き込まれる男性陣にも注目だ。妻・通子に気づかれることなく、6年もの間、多衣と関係を持ち続けた旬平。多衣を愛してしまったことは事実だが、第1話で通子に離婚届を渡す決断には彼なりの事情がある。この旬平の行動や今後の彼の心の動きが、彼女たちのバトルをどう発展させるのか期待が高まる。また通子の兄の友人であり、通子に秘かに想いを寄せる笠井もこの物語には欠かせない。不器用な人物で、自分の想いを秘めたまま通子を支えることになる。通子と多衣、そして旬平の関係性をよりいっそう複雑にすることは間違いないだろう。
本作で展開される壮絶な女同士のバトルは、木村と水野の演技バトルとも言える。完成披露試写会で、木村と水野は、今作のドロドロとした雰囲気を感じさせない裏話を明かしている。水野は木村の人柄について「こんなに憎み難い人はいない」と評し、彼女を罵倒するような台詞を言わなければならないことに苦しんでいると明かしていた。木村は「演技の直前まで子供の夕飯のことで頭がいっぱい」と語っていた。
しかし、共演する萩原と田中が驚くほど、木村は演技に対するオン・オフの切り替えがすごいという。完成披露試写会で話された内容から、撮影中の和気あいあいとした様子を想像することはできても、作中からその雰囲気を感じとることは全くもってできない。木村と水野が晴れやかな表情を浮かべることはほとんどなく、緊張感のある正妻と愛人を見事に演じきっている。視聴者をこのドロドロとしたストーリーにどこまで没入させることができるか、彼女たちの演技バトルにも注目だ。酸いも甘いも噛み分けた俳優陣4名によって、大人の濃厚な世界が妖艶に彩られる。激しくも美しい愛憎劇に、目が釘付けになるはずだ。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』
テレビ朝日系にて、11月10日(土)スタート 毎週土曜23:15〜放送
出演:木村佳乃、水野美紀、田中哲司、萩原聖人ほか
原作:連城三紀彦『隠れ菊』(集英社文庫刊)
脚本:龍居由佳里
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日)、清水真由美(MMJ)
演出:植田尚、Yuki Saito
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/anawata/