『旅猫リポート』インタビュー
福士蒼汰が語る、役者としての現在地 「ようやく自分の足で、振り出しに戻ってもいい」
「装わないというのを大事に」
ーー回想シーン以外では、一切悲しい過去などを彷彿とさせない悟の姿が印象的でした。
福士:悟は過去に色々な経験をしているんです。でも、その背景がエネルギーになって、人に依存しない性格や、優しい部分が生まれてくるのだろうと思ったので、その根本の部分はどのシーンでも忘れないよう、大事に肝に据えて置こうと意識しました。悟は、自分自身を投影してキャラクターを作っていった部分が大きかったのですが、出来上がった作品を観た時に、悟がこんな映り方するんだというのは、新しい発見でもありました。
ーー今年は『曇天に笑う』や『BLEACH』などアクション作品への出演が印象的でしたが、本作のようなハートフルな作品の主人公を演じる時に意識したことはありますか?
福士:『曇天に笑う』や『BLEACH』など原作が漫画である作品は、キャラクターを着なければいけないんです。今回に関しては、強いキャラクターがあると、逆に人の心が見えにくくなってしまうから、あまり装わないというのを大事にしていました。
ーーアクションだと臨場感などが醍醐味になってきますが、『旅猫リポート』にはどんな楽しみ方があるのでしょうか?
福士:アトラクションではなくて、絵画を見ているような感覚なのかもしれません。同じ映画でも文系な作品というか。だから観る人によっても感じ方が違う作品になると思っています。アクションは、ジェットコースターのように「これ乗ったら楽しいよ!」という感じで、観る方全員を楽しませる方に持っていくことが多いと思うんです。今回のような作品は、絵画を見た時にその方たちがそれぞれの感想を持たれるように、観る方それぞれの受け取り方をしていただけたらと思います。
「1ミリサイズだとしてもひとつ“愛情”があれば」
ーー現場でのナナちゃんを含めた共演者とのやり取りはありましたか?
福士:意図はしてないと思うんですが、共演者に動物好きが多くて(笑)。広瀬(アリス)さんは今、猫と犬の両方を飼っているらしく。猫の可愛い部分、犬の可愛い部分を大野(拓朗)さんと話したりもしました。
ーーナナちゃんが一番なついていた人は?
福士:トレーナーさんです(笑)。 自分は一緒にいることが多かったので、映画内で言ったら自分なのか、悟なのか? という感じでしょうか……。悟を演じたことで猫に対しての想いが、すごく大きくなっていったのは事実で、自分自身は飼ったことがあるような感覚になってしまうくらいでした。
ーー悟とナナちゃん、そして友人や家族のつながりが軸に描かれていきますが、人とのつながりについてはどのように考えていますか?
福士:色んなつながり方があると思います。でも、小さくてもいいから“愛情”があると、つながることができるのかなと思います。サイズは色々あって、どう向かっていくのか方向性も違うかもしれないけれど、1ミリサイズだとしてもひとつ“愛情”があれば。