惨憺たる上半期が遠い昔のよう 2018年下半期は“これぞホラー映画”な作品が目白押し

『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(c)2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved

 そして、本年の最大の爆弾になるであろう『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(11月10日公開)。ニコラス・ケイジが愛する女性マンディを殺され、復讐にも燃える男レッドを演じる、ウルトラ・バイオレンス・リベンジムービーという触れ込みだ。しかし、これはバイオレンスムービーというより、完璧に気が狂ったロック野郎しか登場しない、純然としたロックムービーなのだ。

「俺の愛する女を殺りやがった! ぶっ殺してやる!」「俺の音楽を馬鹿にしたか? ぶっ殺してやる!」「俺は神だ! ぶっ殺してやる!」「老いて死ぬくらいなら、燃え尽きてやる!」

 そんなロックな生き方をする連中が大暴れする。ニコラス・ケイジの鬼気迫る血まみれの演技やアンドレア・ライズブロー演じるマンディのエキセントリックな表情も素晴らしいが、鬼才パノス・コスマトス監督の、ある種の余裕すら感じる狂気的な映像美が凄まじい。その極色彩の映像は、観る者を別の世界へと誘うだろう。また本作が遺作となった、ヨハン・ヨハンソンのサウンドトラックも爆音でマスタリングされており、とんでもなくロックでドラッギーな作品だ。

 というわけで、2018年後半は、ハッタリの効いた宣伝文句、容赦のない残酷描写、心に傷を残すほどの陰鬱な展開。どれもこれも“ああ!これぞホラー映画!”という作品が目白押し。一体、本年前半のあのアンニュイな雰囲気は何だったのか?

 また、日本公開が決定していないが、海外でも次々と期待のホラー映画が続々と公開されている。金縛りで人を取殺す悪魔を描く『Mara』、全身不随の男が体に特殊チップを埋め込み殺人マシーンに変身、妻を殺したギャング団を血祭りに上げる『Upgrade』、やる気所か殺す気マンマンになるエナジードリンクが巻き起こすゾンビパニック『Office Uprising』等々……これらが日本公開されるよう、ドンドン劇場に足を運んで、ホラー映画を盛り上げて行こう!!

■ナマニク
ライター。ZINE『残酷ホラー映画批評誌 Filthy』発行人。『映画秘宝』にて「ナマニクの残酷未公開 Horror Anthology」連載中。単著に『映画と残酷』(洋泉社)がある。2011年シッチェス映画祭に出展された某スペイン映画にヒッソリと出演している。

■公開情報
『へレディタリー/継承』
11月30日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド
脚本・監督:アリ・アスター
製作:ケビン・フレイクス、ラース・クヌードセン、バディ・パトリック
撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集:ジェニファー・レイム、ルシアン・ジョンストン
音楽:コリン・ステットソン
ミニチュア模型・特殊メイク:スティーブ・ニューバーン
提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ
配給:ファントム・フィルム 
原題:Hereditary/2018年/アメリカ映画/ビスタサイズ/127分/PG-12
(c)2018 Hereditary Film Productions, LLC
公式サイト:hereditary-movie.jp

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