『チア☆ダン』なぜスポーツ青春ドラマとして成立? 佐久間由衣ら登場人物から考察

 アメリカの映画やドラマでは、チアダンスやチアリーディング部の女子高生はスクールカーストの頂点にいて容姿端麗、プロムでクイーンに輝いて高校生活を華々しく終えるようないわゆるリア充の陽キャラ。それゆえに自信満々で鼻持ちならない性格の持ち主として描かれることがよくある。しかし、ROCKETSには誰ひとりとしてそのようなメンバーはおらず、歯に衣着せぬ物言いをする汐里や茉希(山本舞香)、はじめはヒール役だった望(堀田真由)でさえ、他人を見下したり誰かを陥れてでものし上がろうとするような邪悪さがない。

 麻子に想いを寄せる年下男子が登場したり、彼氏がいるメンバーがいたりと恋愛関係のエピソードも挿入されたが、注目の若手女優をこれだけ揃えているのに軽いタッチのガールズドラマではなくスポーツ青春ドラマとして成立しているのは、恋愛色が薄いからという理由よりも登場人物たちのこの清廉さによるものが大きい。

 また、キャストやストーリー以外で印象的だったのが、サンボマスターの楽曲だろう。曲に合わせて踊るだけでなく、セリフでも何度も口にして自分たちを奮い立たせる「できっこないを やらなくちゃ」。そして、仲間を思う彼女たちの心情そのものであり、大人からのエールのようにも聞こえる「輝きだして走ってく」。この2曲が最後のピースのようにドラマにぴたりとはまり、「全米制覇」という壮大な目標に向けて走り続けるひたむきな女子高生たちを輝かせてきた。

 福井を離れ、ROCKETSのメンバーは全国大会が行われる東京の会場へと向かう最終回。これ以上ないほど素晴らしい結果を出して大会を終えるのか、それとも努力しても報われないことはあるという人生の苦さを思い知らされるのか。はたまた視聴者の想像に委ねる形でエンディングを迎えるのか。いずれにしてもROCKETSの集大成となるダンスを最後までしっかりと見届けなくてはならない。

■古閑万希子
ライター。映画評や映画ノベライズを手掛ける。

■放送情報
『チア☆ダン』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜放送
出演:土屋太鳳、石井杏奈、佐久間由衣、山本舞香、朝比奈彩、大友花恋、箭内夢菜、志田彩良、オダギリジョー、佐生雪、溝口恵、福地桃子、堀田真由、伊原六花、足立佳奈、石崎なつみ、坂ノ上茜、守屋ことり、八木莉可子、阿川佐和子、木下ほうか、高橋和也、紺野まひる、松本若菜、本多力、森矢カンナ、木原勝利、広瀬すず、新木優子
原作:映画『チア☆ダン』製作委員会
脚本:後藤法子、徳尾浩司
プロデューサー:韓哲
協力プロデューサー:高山暢比古
演出:福田亮介、金子文紀
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/cheerdan_tbs/

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