イベント上映、配給、ソフト化まで Gucchi’s Free School主宰・降矢聡氏に聞く“自主”の醍醐味
「日本で上映することによって、広がりが生まれそうな作品を選んでいます」
ーー単刀直入に聞いてしまいますが、上映イベントを1回やった際、費用の総額はいくらぐらいになるんでしょう?
降矢:1回の上映料は作品によってかなり差があるんですけど、平均で500ドル(55,500円/1ドル=111円換算)ぐらいですかね。そこに会場費、字幕入れの費用、チラシの制作費などで、総額20~30万円程度でできちゃいます。
ーー上映イベントに興味がある人にとっては勇気が出る金額ですね。
降矢:例えば友達と4人で一緒にやったら1人5万円なので、頑張れば誰でもできる金額だと思います。それで作品が話題になって、じゃあ配給もやろうとなったら、お金がもっと入ってくるかもしれないですし。みんなやればいいのに、と思っています(笑)。ただし、字幕制作者の方やデザイナーの方にはかなり少額でお願いして引きつけてもらっているので、感謝しかありません。
ーー近年は上映イベントと並行して現在イメージフォーラムで上映中の『タイニー・ファニチャー』をはじめとした作品の配給活動も行っています。上映イベントから配給にも手を拡げた理由は?
降矢:イベントで映画を上映した後に、劇場さんから声をかけていただく機会が多くなったのが理由です。グッチーズはこれまで、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編デビュー作『アメリカン・スリープオーバー』、ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督の長編デビュー作『キングス・オブ・サマー』、リチャード・リンクレイター監督の初期作『スラッカー』、そして現在上映中の『タイニー・ファニチャー』の4本を配給してきましたが、例えば『スラッカー』だと、ちょうどその当時、リンクレイター監督の新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』が日本公開されるタイミングで、それに合わせて『スラッカー』を上映したいというようなご要望をありがたいことにいただいて。最初は自分たちもできるかどうかわからなかったんですけど、とりあえずやってみますという気持ちでやってみることにしたんです。
ーー劇場側からの声が後押しになったと。
降矢:あと、イベント上映で観ていただいた方々の口コミなどで話題になって、観たかったけど観られなかったという声もたくさんいただいたので、そういう声がある以上は頑張っちゃおうかなと(笑)。
ーーちなみに、グッチーズは現在どれくらいの人数でやられているんですか?
降矢:もともとは、それこそブログ時代から一緒にやっていた仲間を含めて数人でやっていたんですが、配給をするようになってからは基本的に僕1人でやっています。今回の『タイニー・ファニチャー』もそうですが、1人では手が回らないときに、手伝ってくれる人3〜4人に声をかけて、一緒にやるという感じですね。なので、今は基本的に“グッチーズ=降矢”ということになります。
ーーイベントで上映する作品、配給する作品はどうやって選んでいるんですか?
降矢:配給する作品は、過去にイベントで上映して反響が大きかったり人気のある作品だったりしますが、自分が個人的に面白そうだなと思った作品や、その作品を日本で上映することによって、いろんな広がりが生まれそうなものを選んでいます。基本的には、僕自身が観たかったとか日本で公開してほしかったという気持ちがモチベーションにはなっていますね。
ーー上映イベントの企画と配給に加えて、『アメリカン・スリープオーバー』と『キングス・オブ・サマー』はBlu-ray&DVDをリリースするというパッケージ化まで行っていますね。これはどういう流れで?
降矢:そもそも配給自体するつもりではなかったんですけど、配給に関して権利の交渉をする際に、“ALL RIGHTS(オールライツ)”という選択肢が出てくるわけです。これは、配給はもちろん、ソフトの販売も配信もテレビ放送もできる全部入りパッケージみたいな権利で。そうなったときに、もしも配給で失敗しても、配信でお金が入ってくるし、うまくいけばソフト化でもお金が入ってくると思って、やることにしました(笑)。あとはBlu-rayやDVDを作るのって、単純に楽しそうだなと思ったんです。それでいろいろと調べて、いろんなプレス業者さんにお声がけをしていたら、名古屋のフェイズアウトという会社がグッチーズの活動にすごく興味を持ってくれて、共同販売のような形で今一緒にやらせていただいています。最初リリースした『アメリカン・スリープオーバー』は、やっぱり結構なお金が必要ということになり、クラウドファンディングを利用させていただいて、無事リリースすることができました。
ーー最初から構想があって、イベント上映→配給→配信・ソフト化と進んできたわけでなないんですね。
降矢:本当にその時々の反応で今までやってきた感じですね。