最もショッキングな場面が訪れる 戦争激化の『この世界の片隅に』ついに“死”の影が見え隠れ

 桜の木の枝に腰掛け、会話をするすずとリン。すずを取り残して木から飛び降りるリンと、なかなか降りられなくてその場から動けずにいるすず。そして、そんなすずを探して周作(松坂桃李)が迎えにくるときのショット。桜の美しさと同時に、誰もが知るその花の儚さが、あたかもこれから劇中に訪れる悲しい戦争の描写を物語っているかのように映し出される。

 日常から戦争へと移り変わることを告げるこの花見のシーンでは、同時に“死”がすぐそばに迫っていることが語られる。先週の放送ですずが遊郭を訪れ、ザボンをあげたテル(唐田えりか)が亡くなったことを知らされるのだ。そして、木から降りたすずの目線の先で、振り返るリンの姿。神々しくも輝き、桜の花びらが彼女の周りを舞い散っていく。どことなく、死相を漂わせたそのショットからは、もうリンが登場することがないのではと予感せずにはいられないほどだ。

 そして物語は戦争に飲み込まれていく。相次ぐ空襲警報と、それに対する備え、そして防空壕の中での様子。円太郎( 田口トモロヲ)が働く工場が爆撃されて消息が掴めなくなり、周作が軍人として訓練を受けるために家を離れることに。そして女性だけになった北條家だったが、ほどなくして円太郎の行方を突き止める。そして、この物語で最もショッキングな時限爆弾の場面が訪れるのだ。

 言葉を失うシーンではあるが、戦争というもののありのままの姿を描写する上でも、この物語を描く上でも決して欠かすことのできないこの場面。正直なところ、この場面に臨むために2週間も心の準備をする時間を与えてもらえるのは、連続ドラマとしての最大のメリットなのかもしれない。しかも、次週予告を観る限り、さらに8月6日まで描かれるようだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊、『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰ほか
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、新井美羽、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘祐太郎、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/

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