明らかに何かが変? 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の隠された魅力を徹底解説

トム・クルーズとヘンリー・カヴィル

 ヘンリー・カヴィルといえば、近年のDC映画でスーパーマンを演じていることで有名だが、『007』の主役ジェームズ・ボンド役の候補に選ばれたり、さらに本シリーズと同じく、TVドラマをリメイクしたスパイ映画『コードネーム U.N.C.L.E.』に、ナポレオン・ソロ役として主演した俳優だ。じつはこのナポレオン・ソロ、当初はトム・クルーズが演じるはずだった。しかしトムは、『ローグ・ネイション』の撮影と重なるため、最終的に役を降りていたのだ。

 ということは、役柄は変われど、今回はアメリカのTVドラマを源流に持つ2大スパイを演じる2人が、1つの作品に同時に出演し、反目し合いながら共闘するという設定のなかで火花を散らすことになる。このシチュエーションはアツい。

 ヘンリー・カヴィルは口ひげを生やすことで、見た目の上では、そのスター性は抑えられているものの、よく見ると瞳のキラキラした輝きはトムを凌駕するほどである。この2人のどちらがよりスターとしての魅力があるか。それもまた、本作に緊張感を与えている。

マッカリー監督はなぜ続投したのか

 本シリーズは、第1作を撮ったブライアン・デ・パルマ監督が他の作品を手がけるという事情で、第2作から降板するなど、成り行きによって毎回1作のみで監督が代わることが伝統になった。その度に、脚本が監督の持ち味に合わせたものになっているところが面白い。スタイリッシュなサスペンス・スリラー、詩情を含んだ耽美的アクション、TVドラマ風ツイストの連続劇、コメディ要素の強いガジェット・アクションと、それぞれにスタイルが変更し、全く別の映画として見られるところが楽しいシリーズなのである。

 だが本作に限り、前作『ローグ・ネイション』を担当したクリストファー・マッカリー監督が続投している。これは本シリーズのプロデューサーであるトム・クルーズが慰留したためだといわれている。しかし、なぜクリストファー・マッカリー監督だったのだろうか。

 マッカリー監督は、もともと『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)で脚光を浴びた脚本家であり、『ワルキューレ』(2008年)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017年)などの、近年のトム主演映画で脚本を担当し、『アウトロー』(2012年)では監督・脚本を単独で務めているように、トムの信任が最も厚い人材の一人だ。

 名だたる映画監督に並んで、『ミッション:インポッシブル』という大ヒットシリーズを手がけるという意味では、大抜擢だったといえる5作目『ローグ・ネイション』は、大方の予想を覆し、シリーズ中でも屈指の出来となった。第1作のような、かつてハリウッド映画が持っていたロマンティックな魅力が作品に宿っている。そして、そのような充実した作品を完成させながらも、マッカリー監督は、トムの意向を最大限汲んでくれるのである。

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