『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点

『ハン・ソロ』の魅力と問題を徹底考察

失われた『スター・ウォーズ』の可能性

 シリーズのプロデューサーは、インタビューのなかで、監督の交代はその資質にあったということを述べている。だが、そもそも監督を選んだのはプロデューサー自身であるはずだし、失敗したくないのであれば、製作中も綿密に打ち合わせを行い、内容のチェックをしなければならないはずだ。製作が佳境に入った段階でなければ、その出来を判断できないというのは不思議だ。経営陣など、上層部の鶴の一声によって全てが決められているのではないかという気もしてくる。問題なのは、監督交代や撮り直しを、結局のところ誰が判断しているのか判然としないところであり、その人物たちは、作品を正当に評価できる能力が備わっているのかすら、よく分からないというところだ。

 そうなってくると、果たして『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の撮り直しや、『エピソード9』や本作における監督交代すらも、正しい判断だったのか怪しくなってくる。ギャレス・エドワーズ監督は、『ローグ・ワン』において、ドキュメンタリー風の撮影や演出を行う、実験的な作風を試していたという。そのことで現場に混乱が生じていたということが伝えられているが、そのままこの作品が撮られていたならば、“『地獄の黙示録』のような『スター・ウォーズ』”として、後年カルト的な人気を得る作品になっていたかもしれない。同様に、フィル・ロード、クリス・ミラー監督がそのまま『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』をもしも完成させていたら、一体どんな作品になっていたのだろうか。それを実際に観ることのできない我々には、どちらが良かったのかをジャッジすることは不可能なのだ。

 いずれにせよ本作によって、またしてもシリーズ制作における問題が露呈することになってしまった。複数のトラブルが起こったことから、降板した監督たちや、新たに抜擢された監督たちは、制作体制のしわ寄せを受けてしまったと見るべきだろう。本作の興行的な不振によって、以後に予定されているスピンオフ制作の予定に影響が出るのかは、まだはっきりとしないが、『スター・ウォーズ』シリーズという、文化的な財産の価値を失わせることのないよう、ディズニーは最大限の努力をしてもらいたい。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
6月29日(金)全国公開
監督:ロン・ハワード
製作:キャスリーン・ケネディ
出演:オールデン・エアエンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー、ヨーナス・スオタモ、ポール・ベタニー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

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