『スター・ウォーズ』がフィギュアの歴史を変えたーー『ボクらを作ったオモチャたち』が描く“神話”

 しかし、『スター・ウォーズ』は違った。3.75インチという大きさでは一部を除いて服を布で作ることはできないため、キャラクターたちの服装は最初からプラスチックで成形されることになった。この路線が大ヒットしたことで、「服は彫刻で表現する」「サイズは3.75インチ前後、大きくても6インチ」という形態がアクションフィギュアのスタンダードとなっていく。

 ここから先の、80~90年代を通じてのアクションフィギュアの進化は凄まじい。「服や髪を樹脂で成形する」という変化はフィギュア自体の精巧さや表現の幅を生み出し、『スター・ウォーズ』の商品が大当たりしたという事実は「恒常的にテレビで放送していないコンテンツでも、フィギュアにすれば売れる」という新たな常識を作り出した。アクションフィギュアは80年代に「何をやってもいい」というジャンルのオモチャとして捉え直されたのである。その中からは、ファンタジーと“力”の魅力を押し出した『マスターズ・オブ・ユニバース』のような『スター・ウォーズ』への異形の対抗馬が生まれた。またアクションフィギュアの元祖である『G.I.ジョー』もアニメ放送を開始。かつてのような12インチで布の服を着たフィギュアではなく、無数にラインナップされた3.75インチのフィギュアという方法で再起を図る。80年代以降のキャラクタービジネスの群雄たちを生み出したのは、『スター・ウォーズ』のフィギュアだったのだ。

 以上の歴史を踏まえると、近代的なフィギュアの始祖である『スター・ウォーズ』に始まり、「樹脂でできた着せ替え人形」の元祖の『バービー』へと遡った後、『スター・ウォーズ』の流れを汲みつつ別の路線へと踏み出した大ヒット商品『マスターズ・オブ・ユニバース』、そして男児向けアクションフィギュアの根源でありつつ時代に合わせて近代化を果たした『G.I.ジョー』へと至るという、シーズン1のエピソードがいかに考えられた打順かおわかりいただけると思う。さらに言えば『G.I.ジョー』は日本に上陸した後『変身サイボーグ』という玩具史に残る名作へと文字通り変身しており、そういった伏線はシーズン2の『トランスフォーマー』回で回収されている。一本ずつで観ても楽しいが、エピソードごとの内容を連携させることで、より立体的にオモチャの発達史を理解できるようになっているのだ。見事という他ない。

 もちろん、取り上げてほしいオモチャはまだまだ無数にある。個人的な興味で言えばガルーブの『マイクロマシーン』シリーズもやってほしいし(まあ無理だろうけども……)、マクドナルドのハッピーミールの歴史も知りたい。シーズン3があるかどうかは知らないが、我々はここで、いつまでも次のシーズンを待っている……(コンボイ司令官の声で)。

■しげる
ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

■配信情報
Netflixオリジナル作品
『ボクらを作ったオモチャたち』
シーズン1~2独占配信中
https://www.netflix.com/title/80161497

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